思いやり
堀川はビルの最上階までエレベーターで行き、そこにある居酒屋に入って行った。そこは大騒ぎをしている客がいつも少なく、落ち着いて飲むことができる店だった。案内された席は窓際で、眼下に広がる夜景が美しい。駅周辺のどの通りの街路樹も、煌びやかなイルミネーションに彩られていた。
「こんばんは。待った?」
美羽の可愛らしい、きれいな声が背後から聞こえた。振り向くと紅い服の彼女が微笑んでいた。
「そうでもない。今日は忙しかった?」
「そうね。ちょっとだけ」
「お疲れ様」
美羽は堀川の左隣の席に座った。堀川は美羽のきれいな長い髪が気に入っている。彼は左手でそれを撫ぜた。
「秀人さんも、お疲れ様でした」
「……美羽ちゃん。今日も誰かにアタックされなかった?」
「……どうだったかな?微妙ね」