桜の頃
−10−
圭介のアパートに着いた2人は、もう少し飲みなおすことにした。
冷蔵庫から冷え過ぎに近い状態で何日前からかあった缶ビールを飲み始めた。
「冷てえー。冷えすぎだろ。」
「ずっと残業で遅くて飲まなかったからな。」
圭介もビールを開けると一口飲んだ。
「なあ、圭介。最近、うまくいってるのか?」
雅斗は落ち着いた声で質問した。
「うまくいってるよ。なんだよ、急に」
「いや・・別にいいんだけどさ。」
煮え切らない態度に圭介は少し苛立った。
「なんだよ。はっきり言えよ。そんな仲じゃないだろ。」
雅斗は缶ビールをグビっと飲むと缶をテーブルの上に置いた。
「そんな仲じゃないっていうなら、一度ぐらいお熱い話も出るんじゃないのか。和実ちゃんとの。」
「なんで雅斗に エッチの話までしなきゃならないんだよ。」
圭介もビールを喉の音がするくらいに飲み込むと缶をテーブルに置いた。
「確かにまだ何もないけどさ。彼女まだ、やっと社会に出たんだ。外に出たらすぐそんな世界じゃ、嫌になるだろ。
話しててわかったんだ。人との付き合いもずっと幼くて、っていうか、人との和がうまく取れなかったっていう感じでさ。
出会った時なんて、前に話したけど いきなり『なにか?』ってさ。そりゃ、こっちは彼女より6こ上の今が旬みたいな男だけど
ひとり突っ走って、失くしちゃうのも、そういう事じゃなくて、彼女とさよならになるのは嫌だと思ってさ。」
圭介は胸の内を雅斗に語ると、残りのビールを飲み干した。
「そっか。要らぬお節介だったな。ごめん。」
「いや」
「でも、今日店で会ったあの二人、気をつけろよ。俺そういうの結構わかるんだ。」
「経験豊富だね。雅斗は・・。」
雅斗は、飲み干した缶を握り潰した。
「俺、マジに言ってるんだぜ。」
「わかってるって。サンキュ!」
それから二人はどう寝たのか、意識が途切れたように眠った。