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桜の頃

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     −8−

和実はこの日以来、今までとは違う出来事にも少し積極的になれた。
本格化してきた就職活動も友達との出かける約束も前ほど嫌でなくなった気がしていた。

展望公園も圭介と来ることはあっても 以前のようにひとり重い気持ちを投げ出しに来ることはなくなった。
楽しい事も悩みも受け止めてくれる人ができたせいなのだろうか。
自分の気持ちが出せるように心が成長したのだろうか。
会わない日もメールで話せるだけで良かった。
都合が悪ければ会えなくても構わなかった。

季節が移っても 電話やメールでのおしゃべりは楽しく、お互いの誕生日を祝ったり、映画を見たり、
少し遠出のドライブに行ったり、迎えに来てくれた時には家族とも話をした。
ふたりでクリスマスにケーキのバイキングにも出かけた。
大晦日から新年にかけては深夜のデートもした。

年が明け、和実が成人式を迎えた時には20本の花を抱えてお祝いもしてくれた。
春、和実も就職が決まり、会えない日々は増えたが、ふたりで過ごすことに変わりはなかった。

これからも、そんな日々が続くだろうと思っていた。
少なくとも、和実の場合・・・。

作品名:桜の頃 作家名:甜茶