潮風の街から
年中行事考≪中秋の名月≫
2010年9月22日は旧暦の8月15日。十五夜の日です。
この夜は快晴で、見事な満月を見ることができました。
いつもならもうちょっと涼しくて、秋らしい風が吹いているはずですが。
秋風にそよぐススキの若い穂。
それが秋の風情を醸し出してくれるんですよね。
なのに、今年の夏の暑さは異常で、それが9月にまで及んでいて、ちっともそれらしくありません。
でも、せっかくの年中行事。
雲一つない夜空をあおいで、煌々と輝く満月を見ました。
子どもの頃、近所の子どもたちで集まって、こっそり月見だんごを盗みに行くのが習わしでした。
盗む、というと聞こえは悪いですが、この月見だんごをこっそりいただくことは盗むのとは解釈が違うのです。
縁側に供えた月見だんごがいつの間にか、いくつかなくなっている。
それは月が喜んで食べてくれたのだと言って、縁起がよいこととされたのです。
子どもたちも大人に見つからないように隠れて長い棒の先に釘などをつけて、だんごにさしてとったり……。
なかなかスリルのあることでした。
そうして家々を廻って、少しずつとって集めたお団子や果物をみんなで分配するのが楽しかったのです。
ところが、年々そのほほえましい習わしが違ってきているのです。
風情のある習慣というより、文字通り盗むことが主体となり、面白半分にやるようになってしまったのです。
それは、一つどころか、供えてあるお団子をお皿ごととってしまって、食べずに捨ててしまったり。
ひどいときは、一緒に供えてあった果物も全部とっていってしまうというような悪質ぶり。
そのため、縁側に供えた家では、ガラス戸を閉めて鍵を掛けたり、二階のベランダにお供えしたり。
最近では、「ええ?」と驚くことがありました。
会社の同僚が朝から「お菓子の用意をしなくちゃ」と言って、忙しそうなのです。
理由を聞いたら「お月見で子どもたちが来るので、その子どもたちに配るんです」という。
「はあ?」とわたし。
なんと、最近では徒党を組んだ子どもたちが、堂々と「お月見で〜〜す」といって家々を訪問するのだそう。
そして一人ずつ袋に入ったお菓子をもらって帰るのだというのです。
月日が流れ、時代が変わるというのは人の心が変わっていくことなんですね。
夜空に輝く月はいつの時代も変わらないというのに。