CROSS 第15話 『せめぎあい』
「知っているでしょうけど、公聴会は評議会議事堂でするの。宣誓
の後、霊夢が顛末を説明して、すぐに質疑応答が始まるわ」
西行寺が、窓の外を見たままの少佐に言った。少佐は黙ってうな
ずいた。
「公聴会ではウソはつかないこと。ウソをついたら、地獄で苦しむ
前に、地獄の怖い人に舌を抜かれるわよ」
「ふーん」
少佐が適当な返事をしたので、妖夢が半身の霊魂をぶつけてきた…
…。少佐はむこう脛を痛そうに押さえた……。
「まあまあ、後で困るのは本人だから」
西行寺がそう言って、妖夢をなだめた。
「……それに、もうすぐ着くんだから、面倒事を起こさないで」
少佐が見る窓の向こうには、幻想共和国の最高機関である評議会
が行なわれる『幻想共和国評議会議事堂』が見えてきていた……。
建物や敷地がライトアップされて綺麗だったが、これから出席する
公聴会のことで頭いっぱいの少佐には、どうでもいいことだった…
…。
そして、リムジンは議事堂の入口の前に着いた……。射命丸をは
じめとする大勢のマスコミが、そこで待ち構えていた……。
「まったく、帝国連邦の士官学校はちゃんと訓練しているのかしら」
レミリアはそう言うと、ティーカップの紅茶を飲んだ。
少佐が乗った白玉楼のリムジンが議事堂に着いたころ、彼女もリ
ムジンで議事堂に向かっていた。
「士官学校は1年だけですから、基本的なことしか教えられないん
でしょう」
彼女のすぐ近くには、紅茶のポットを持った咲夜の姿があった。
「余計なことを喋ったりしなければいいんだけど」
レミリアがため息をついた。
「大丈夫ですよ。彼も死刑にはなりたくないでしょうから、うまく
切り抜けるでしょう」
「早く帝国連邦の艦隊が来てくれるといいんだけど」
「でも、お嬢様。もし、それが原因で戦争が起こったら、我々はど
っちの側につくんですか?」
咲夜はレミリアにおそるおそる尋ねた。
「……さあね」
レミリアはそれだけ言うと、カップの中の紅茶を全て飲み干し、
「運命はいくらでも操れるんだから、そのときはそのときに考えれ
ばいいのよ」
そう言うと、咲夜に紅茶のおかわりを頼んだ。咲夜は黙って、紅茶
をカップに注いだ。
レミリアを乗せたリムジンも議事堂にどんどん近づいていた。
作品名:CROSS 第15話 『せめぎあい』 作家名:やまさん