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CROSS 第15話 『せめぎあい』

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「異常はありません。離陸します」

 コクピットからそう聞こえた直後、少佐は座席のシートに体を押
し付けられた。窓の外を見ると、滑走路がどんどん過ぎ去っていっ
た。そして、すぐに滑走路は途切れ、一面が異次元空間の海となっ
た。どうやら、カタパルトで空母から離陸したようだった。

 シャトルが異次元空間上に浮かぶ幻想共和国の近くまで来ると、
突然、シャトルの前方に稲妻が走る丸い裂け目ができた。その裂け
目は、その世界への入口で、シャトルはそのまま、裂け目の中に突
入した。
 後を追うかたちで特務艦も、他にもできた裂け目の中に入ってい
った。その幻想共和国近辺の界域には、空母と何隻もの潜超艦だけ
が残され、それらの艦は、幽霊船のように異次元空間で漂っていた。



「陸軍ので十分だから、1個艦隊をすぐに寄越して」

 レミリアが紅魔館の執務室で、どこかと電話で話していた。
『しかし、それでは戦争が起きてしまいます』
電話の相手は、おそるおそるそう言った。
「ただの脅しよ、脅し。少佐を解放しなければならないというとこ
 ろまででいいから」
『……しかし、うまくいく保障はありません』
「構わないわ」
『…………』
「とにかく、お願いね」

 レミリアはそう言うと、電話をガチャリと切った……。そして、
電話を切った彼女は、執務室にある、ブラウン管のテレビをつけて
みた。
 ちょうどニュースの時間で、トップニュースは、少佐が公聴会に
出席するということだった……。少佐の顔写真がいっしょにあった。
「余計なことを喋る前になんとかしないと」
レミリアはテレビを見ながら、そう呟いた。



 裂け目を抜けたシャトルは、幻想共和国の上空を飛んでいた。今
は夜なので、暗くて、あまり下は見えなかったが、森や湖が広がっ
ているのはわかった。
 何年前とは風景が変わっており、前に来たときは建設中だった大
きな赤い電波塔が、完成してそびえ立っていた。建設中の建物もた
くさんあり、何年かすれば、森はビルの影に隠れてしまいそうだ…
…。
 シャトルはしばらく飛んだ後、高度を落とし始めた。少佐がどこ
に着陸するんだろうと思っていたところ、シャトルはすぐに着陸し
た。うまく着陸ができたようだったが、振動がひどかった……。
シャトルはタイヤなので、多少の振動は仕方がないが、滑走路がひ
どい出来だったらしいので、振動が大きくなっていた……。

 やがて、シャトルは停止した。とうとう、幻想共和国に着いたの
だった……。