【第九回・四】くり・栗・みっくす
「…お館さヴぁあああああああああああああああああああン!!!!!!!!」
「グハッ!!;」
坂田が叫びながら京助に抱きついた
「負けたのか!? 俺は負けたのかッ!!?」
坂田が京助の首根っこを掴んで喚く
「知らんわッ!!;」
京助が怒鳴る
「俺もう出家する-------------ッ!!!」
オイオイと坂田が嘆いた
「京助と坂田君もいいかしら?」
「ハイ!!」
「オイ;」
母ハルミが京助と坂田に声をかけると坂田がすかさず返事をしたのに京助が口の端を上げて突っ込んだ
「…見てるなら手伝え;」
母ハルミに栗のイガ剥きを言いつけられた京助が背中に視線を感じ振り向かずに言う
「…ん」
相変わらず初めの一言が聞き取れない話し方で制多迦が返事をした
「…どうした? 制多迦」
イガ付きの栗をじーッと見ている制多迦に坂田が聞いた
「…れウニ?」
制多迦がイガ栗を指差して聞く
「栗」
京助がイガをペイっと庭に落としながら答える
「…り…」
制多迦が栗をまたじーっと見る
「…にじゃなく栗…」
ボソッと言った制多迦がわしっと勢いよく栗を掴んだ
「…痛ぇんだろ;」
そのまましばらく止まったままだった制多迦に坂田が言う
「…ん;」
制多迦が頷いた
「思いっきり掴んだしな;」
京助がまたイガをペイっと庭に落としながら言った
「…ニ踏んだときも痛かった…;」
制多迦が海水浴で思い切りふんずけたウニのトゲの記憶を思い出しながら言う
「ウニはトゲで栗はイガ」
坂田が箱の中のイガ付き栗を取り出して言う
「似てるけど微妙に違うんよな」
京助が足を組みなおしながら言った
「…ゲとイガ…」
ボソッと言った制多迦がまたイガ栗をじーッと見る
作品名:【第九回・四】くり・栗・みっくす 作家名:島原あゆむ