【第九回・四】くり・栗・みっくす
「栗にサンマにイモにウサギ」
新聞紙の上に並べられた秋の味覚を見て坂田が言う
「ウサギはアカンだろウサギは;」
京助がクロを抱き上げながら言った
「クロ食べちゃ駄目だよー!!」
悠助が坂田の尻をパスンと叩いた
「境内も綺麗になって一石二鳥ね~たすかるわ~」
栗を鍋に入れながら母ハルミが言う
「ですよねッ!!」
坂田が声を大きくして母ハルミを見た
「…って京助君京助君」
そしてその後すぐ京助にカニ歩きで坂田が近付いていく
「なんだよ」
京助が言う
「なんなんだアイツはよッ;」
小声で言いながら坂田がくぃっと親指で指した先には母ハルミにべったりの鳥倶婆迦
「ハルミおいちゃんも手伝う」
鳥倶婆迦が長い袖をイガのついた栗に伸ばした
「しかも呼び捨てかよッ!!;」
坂田が小声で怒鳴る
「あらあらありがとうでも怪我するわよ?ほら痛いのよ~?」
母ハルミが鳥倶婆迦に笑いながら言う
「大丈夫だよおいちゃんは」
鳥倶婆迦が言う
「いや…なんだか妙に母さんに懐いてんだ」
京助がクロを撫でながら言う
「そりゃ見ればわかるッ!!;」
坂田がよくわからない動きをしながら小声で叫んだ
「ハルミは優しいからおいちゃん好きなんだ」
「うおぉおお!!!?;」
すぐ隣から聞こえてきた鳥倶婆迦の声に驚いた坂田が京助に抱きついた
「おいちゃん知ってるぞお前はハルミ馬鹿なんだよな」
鳥倶婆迦が気の抜けたあのお面の顔を坂田に向けた
「だから勝負だ!!」
そして無駄に長い袖を坂田に突きつけた
「なッ…;」
坂田が京助に抱きついたままで眉を上げた
「おいちゃんとどっちがハルミ馬鹿なのか勝負だ!!」
「オイオイオイオイ; 人の母親で勝負するなよ;」
鳥倶婆迦が言うと京助が突っ込む
「ふ…いいだろう…」
坂田が京助から放れながら言う
「オイってば;」
京助がクロを片手に坂田に突っ込む
「おいちゃんの方がハルミ馬鹿なんだからな」
鳥倶婆迦が言う
「俺の方が長いんだもんなー!! ヘッ!!」
坂田が腰に手を当てて勝ち誇ったように背の低い鳥倶婆迦を見下した
「ハルミの胸は柔らかいんだよ」
鳥倶婆迦が言うと坂田が止まった
「そしてハルミはいい匂いがするんだ」
鳥倶婆迦(うぐばか)が更に言う
「おま…」
まるで油の切れたロボットのような動きで坂田が鳥倶婆迦の方を見る
「うぐちゃんちょっと来てくれる?」
母ハルミが鳥倶婆迦を呼んだ
「うんいいよ」
鳥倶婆迦がソレに答えて母ハルミの元に走っていく
「…オーィ?;」
京助が坂田に声をかけた
作品名:【第九回・四】くり・栗・みっくす 作家名:島原あゆむ