【第九回・四】くり・栗・みっくす
「…おいしい」
鳥倶婆迦が言うと京助がゆっくり振り向いた
「そっか」
そして口の端を上げて京助が笑った
「でしょ?」
京助に頭を押えられていた悠助も鳥倶婆迦の方を見て笑いながら言う
「ぅおーい!! イモ焼けたぞー!!」
中島が叫んだ
「サンマもだいぶ焼けたわよー」
そしてそんな中島に対抗するかのように母ハルミ言った
「…だってさ」
京助が悠助と鳥倶婆迦をチラッと見る
「…焼けたって」
今度は悠助が鳥倶婆迦をチラッと見た
「…焼けたの?」
鳥倶婆迦が京助と悠助をチラッと見返した
「じゃ…行きますか」
京助が言って歩き出した
「うぐちゃん」
悠助が鳥倶婆迦の長い袖を引っ張った
「早く行かないとおっきなイモなくなっちゃうよ」
びろ~んっと鳥倶婆迦の袖を悠助が引っ張ると鳥倶婆迦が片足を一歩前に出した
「あ…うん…」
どことなく遠慮しているような態度で鳥倶婆迦がもう一歩踏み出すのを見た京助が頭を掻いた後 鳥倶婆迦の後ろに回った
「言っただろ~…突っ込めよな…ッ!」
「うわっ;」
「あ~! ずるい~!!」
京助が鳥倶婆迦を肩に担いで小走りで走り出すとその後ろを悠助がついてきた
「ヘイ! ハンコお願いします」
母ハルミの傍に鳥倶婆迦を下ろしながら京助が言う
「イモ判ならヘイ! お待ち!!」
アルミ箔にくるまれたイモをカゴに入れた南が笑って言った
「ゴ等のがないんだやな」
ゴがカゴの中を見て言う
「だぁからでっかくてまだ生」
坂田が軍手を履いた手にイモを持ってソレをカゴの中に入れながら言う
「ぷー!!」
ゼンゴが揃って頬を膨らませる
「サンマから食べるからいいんだやな」
ゼンが尻尾を振って母ハルミを見た
「ハイハイ」
母ハルミが紙皿に焼けたサンマを乗せてゼンに手渡した
作品名:【第九回・四】くり・栗・みっくす 作家名:島原あゆむ