【第九回・四】くり・栗・みっくす
「だから今更」
京助がサンマをザルごと地面に置いた
「…ハルミママ」
悠助がハルミを見ると母ハルミがにっこり微笑んだ
「…うぐちゃん…」
そして次に鳥倶婆迦を見る
「あ…あのねっ」
悠助が少し大きな声を出した
「ハルミママは僕と京助のお母さんだけど…でもうぐちゃんもハルミママでいいよ?」
悠助が言う
「だってハルミママはハルミママだし…みんなハルミママって呼んでるしうぐちゃんだけ呼ばないって…変だし…だから…あのね…」
悠助が必死で何かを伝えようとしているのを見て母ハルミが鳥倶婆迦の背中を軽く押した
「…ハルミ…?」
ソレに少し驚いた鳥倶婆迦が母ハルミを見上げると母ハルミが頷く
「だから…あのね…みんな一緒で…」
「ヘーィ!! くりごっハァーン!!」
タイミング最悪なところで坂田が炊飯ジャーを持ってやってきた
「待つんだやな坂田ー」
その後から割り箸と紙皿を持ったゼンゴがかけてきた
「…何だよ?;」
静まり返っている上突き刺さるような視線を向けられた坂田が言う
「なんなんだやな?;」
ゼンゴも坂田の後ろに隠れながら言う
「…場の空気読もうね坂田君」
そんな坂田の肩を南が軽く叩いて言う
「だから何なんだっての;」
坂田が南に聞く
「ハルミさんはみんなのお母さんって話」
中島が言う
「は? ハルミさんがなんだって?」
坂田が真顔で聞き返した
「ハルミママさんはハルミママさんなんだやな」
ゴが言う
「だから…えー…まぁ…お母さん?;」
説明が混乱してきた中島が言った
「だからハルミさんがママでなんだって?」
中島に坂田が更に詰め寄って聞く
「…ぐばか」
坂田にタイミング悪く話を折られて止まっていた鳥倶婆迦に制多迦が声をかけた
「…のね…コレがウニでコッチが栗」
制多迦が傍にあった棒で地面になんだかさっき京助が書いたのとさほど変わらない二つの絵を描いた
「…なじに見える? けど違うんだって」
制多迦が微笑みながら言う
「…制多迦様?」
鳥倶婆迦が首をかしげた
「…も似てるんだよねウニと栗」
制多迦が地面に書いた二つの絵を丸で囲んだ
「…ルミママさんは悠助と京助にとってお母さん…でも僕等もママって呼んでる」
制多迦が言う
「…からハルミママって呼んでいいと思う」
鳥倶婆迦にヘラリ笑いを向けながら制多迦が言った
「…制多迦様…」
鳥倶婆迦がお面の顔を制多迦に向けた
「…すいませんわけがわかりません」
鳥倶婆迦が言うと制多迦がヘラリ笑いのまま首をかしげた
作品名:【第九回・四】くり・栗・みっくす 作家名:島原あゆむ