コスモスの咲く頃
濃い青色の空に真っ白な雲がぽかんと浮かんでいた。
そして太陽がギラギラと照らす広い平地には、見渡す限り同一種と思われる美しい花が咲いていた。
オレは一瞬大勢の何かが振りかえって俺を注視したような錯覚に陥った。
オレがしばらくその光景に見惚れていると、いつのまにかアイツが傍らに立っていた。
「やあ、よく来たな」
アイツは片手を挙げて、今まで見たことも無い様な笑顔を見せた。もっとも十人中八人はソレを笑顔だとは気付かないだろう。
オレは取り敢えず休ませてくれと頼み、家の中に入った。
冷えた麦茶を飲み干すと、冷たさが指先にまで染み渡ってゆくように感じた。
「どうだ仕事は……」
話しかける時、視線をそらすのがアイツのクセだった。
オレは、こいつもこんな事を聞く事があるのかと思いながら、自分と会社の近況を適当に喋った。
「それより何だよここは、花はなかなかキレイだが、あれが今の仕事なのか?」
大きな声は生まれつきでそれはアイツも承知のはずだ。
アイツはしばらく考えた後、ようやく話し始めた。
「アレは仕事というより使命だ。オレはアレで宇宙に帰らにゃならん。実はオレは人間ではないのだよ」
話し始めもおかしかったが、話し全体もかなり混乱していた。
要約するとこういう事になる――。
アイツの祖先は遠い昔に地球にやってきたが、なんらかの理由で故郷に帰れなくなった。