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空想科学省電脳課です。

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「子どもが居ない?」
「容疑者・被害者ともに成人してるってことですか?」
「違う、子どもの居ない家庭なんだ。」
今回の捜査本部(といっても、オフィシャルウイルスバスターは基本的に少数行動なので、捜査員は十人にも満たない)を仕切るのは、空想科学省電脳課が誇る凄腕ウイルスバスター、朝霞憂国だ。彼女は、二十六歳にしてOVB第二実動隊の隊長となった。
鋭い目線で事件に斬りこんでゆく彼女は、密かに剣豪と呼ばれていた。密かにというのは、剣豪なんて、野暮ったくて男くさい名称にそぐわない、しなやかで美しい女性だったからである。……言葉遣いはぶっきらぼうだが。
 彼女は、電子ディスプレイに表示された容疑者・加害者の一覧を横目で見ながら、話を続けた。
「年代は主に十代から三十代の男女。」
「まぁ、ターミナルの使用者層が大体そんなもんですしね。」
「十代後半の未婚男性・未婚女性、二十代前半の未婚男性・既婚女性、二十代後半の未婚男性・既婚男性・未婚女性・既婚女性、三十代既婚女性……互いに面識がある容疑者・被害者もいるが、全員ではない。その辺からの捜査は意味を成さないだろう。」
ターミナルは、一種のコミュニティである。人と人が繋がり、またそこから新たな人へと繋がってゆく。単純に、きりがないのだ。第一、暴力事件の容疑者と、変死事件の被害者が顔見知りでも、恐らくそこに因果関係は存在しないだろう。存在するほうが難しい。

「それで、子どもですか?」
「何か漠然としている気がします。」
「そうでもないさ。そこで、科学調査班の科学鑑定の結果だ。」


この科学調査班は、警察組織にある科学捜査研究所、つまり科捜研とほぼ同一の働きを持つ、空想科学省保有のチームである。常設してある組織な訳ではないので、メンバーは、ものづくり課やバイオ課の職員だったりする。
朝霞は、隣に座り端末を操作している補佐に軽く目配せをして、電子ディスプレイに、科学鑑定の結果を表示させた。一瞬で、画面が切り替わり、数値だらけの表が現れる。カテコールアミンの異常作用を示しているらしいそれは、果てのない聞込みに疲れた心身には少し辛かった。思わず、目を擦ってしまう。

「ヘビーベイビー、電脳空間で作用する麻薬だ。」


「彩人くんは、影野さんのところに行ってくれ。」
「隊長、もう風吹さんですよ。」
「ああそうだったな。じゃあ頼んだよ。」
朝霞にそう言われ、電脳課の風吹陽斗係である彩人は、彼のもとへ赴かざるを得なくなった。確かに、分かりきった展開ではあったけれど、正直、すごく行きたくない。