小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

夢の運び人 Starting Point

INDEX|2ページ/3ページ|

次のページ前のページ
 


――僕は起きた。
 窓から眩しい朝日が差し込んでいる。
 夢の事は気になったけど、特に考える事も思い当たる事もないから考えるのは止めた。
 僕は目を擦りながら部屋を出た。お父さんとお母さんが「おはよう」と言う。僕も「おはよう」と返した。
 お父さんとお母さんは元気がなかった。しょんぼりとした顔をしている。
「お父さん、今日は仕事お休みなの?」
 僕はお父さんに訊いてみた。
「そうだよ」
 お父さんは静かに応える。
「お昼にキャッチボールしようよ」
「いや、今日はゆっくり休ませてくれないか?」
 お父さんは優しく僕に言った。水曜日に仕事が休みなのは珍しかったから遊んでほしかった。
 お昼にお母さんが誰かと電話しているのを聞いた。
 難しい話をしていて、リストラがどうとか、借金がどうとかと言っていたけど僕にはよく分からなかった。
 お絵描きをしているとお母さんが言った。
「今日は外が暖かいわよ。お散歩して来たら?」
「お母さんは行かないの?」
「お母さんは夕飯の支度をしなくちゃ」
 僕は一人でお散歩に行った。
 近くの公園には誰もいなかったから、仕方なく一人でブランコに乗って遊んだ。
 すると一人の男の人が僕の所に来た。僕はブランコを止める。
「坊や、ちょっといいかい? 道を教えて欲しいんだけど」
 男の人は低い声で言った。地図を広げて僕に見せる。
 お父さんから、知らない人にはついて行ったらいけない、と言われていたけれど道を教えるくらいはいいと思った。
「ラフスキーさんのお家なんだけど分かるかな?」
 男の人は困った顔をして訊く。
 ラフスキーおじさんは僕の家の隣の家だったからすぐに分かった。
「ここだよ」
 地図を指で指して示す。
「ああ、ここかあ。ありがとう、坊や」
 男の人は僕の頭を撫でて周りをきょろきょろと見渡す。周りには誰もいなかった。
「ん? ここはどこかな?」
 男の人は地図の真ん中を指差して言った。
 僕は地図を見たけれど、全く知らない場所で困った。
「分からないよ」
 そう言って顔を上げると、男の人は黒光する何かを僕のおでこに付けた。すごく怖い顔をしていた。
「悪いな、坊や」
 男の人の声の後、バシュッという音と僕の意識が遠退いたのは同時だった――

作品名:夢の運び人 Starting Point 作家名:うみしお