男の決意、そして … その結果
亜伊火は、何かを覚悟をしたかのように、
ケース(4)の話しを大輔にした。
それは、もし亜伊火がその天女だったら、地上に戻って来て、伊香刀美の愛人になると言う。
大輔はこれを聞いて、正直「なるほど」とも思った。
天女にとって、伊香刀美との結婚は羽衣を隠されてしまった所から始まっている。
確かに、裏切られたものだったのかも知れない。
しかし、結果としては、
二人は愛し合い、平和な日々の中で子供が4人も出来、天女は母にもなった。
天女にとって、築いて来た家族を捨てられるものではない。
しかし、だからと言って、嘘をつき続けて来た伊香刀美、
その彼との元の鞘へと戻れるものではない。
結果、天女は伊香刀美の愛人となり、
伊香刀美に一生罪を負わせ、その庇護を受け続ける。
妻ではなく、天女の立場に戻ったままで暮らして行く。
そんな権利を執行する。
なんと俗人的な発想だろうか。
こんな亜伊火の『愛人派タイプ』の話しには、
多分 … 男が女を一度愛したならば、
生涯一所懸命尽くすべしというメッセージが含まれているのかも知れない。
そして大輔は思うのだった。
そんな女の気持ちが、たとえ我が儘なものだとしても、
全部亜伊火のために受けて立とうと。
そして、それが愛する女への真心というものなのだろうなあと思うのだった。
「亜伊火は、そんな事を考えていたのか」
大輔は、亜伊火の気持ちが初めてわかったような気がする。
そんな亜伊火の事が、大輔は猛烈に好きだと確信した。
「俺は、亜伊火のためだけに、一生生きて行こう」
大輔はぽつりと一人呟き、結婚を決意したのだった。
作品名:男の決意、そして … その結果 作家名:鮎風 遊