男の決意、そして … その結果
『男の決意、そして … その結果』
晩秋の小さな湖。
今、その湖畔に、
大輔と亜伊火(あいか)は佇(たたず)んでいる。
そして、二人は湖の先の遠景を眺めている。
紅葉で色付き、鮮やかに化粧をした山々。
それらがこの小さな湖の向こうに見える。
そして、北の山々を越えて、
吹き下ろして来る冷えた風が次々に湖面を揺すり、さざ波立たせて行く。
二人の前には、どこともなくもの悲しい哀愁の情景が広がっている。
「もう、秋も終わるのかなあ」
大輔はそっと腕を組んで来た亜伊火に、ぼそっと呟いた。
「そうね、もう直ぐ初雪が降るのだわ … 冬がまたやって来るのね」
亜伊火は湖の向こうに広がる晩秋の風景を眺めながら、物思いに耽ったように返して来た。
大輔はそんな一瞬、「亜伊火にも、そんな哀切な感情があるのかな」と思った。
しかし、やはりそれは違っていた。
「冬が、またやって来るのね」
確かに、亜伊火はそう囁いた。
しかしその後に、情緒のない事を突然言い出すのだ。
「やっぱ冬は、てっちりで … キューと熱燗一杯だわよね、痺れるよ、ねえ大輔」
確かにそうかも知れない。
しかし、秋深まる湖畔に佇み、亜伊火はなぜキューと熱燗一杯、
そこまで思考を飛ばしてしまうのかがわからない。
「亜伊火は一体、何を考えて生きて来たのだろうか?」
大輔はそんな事さえ思うのだった。
作品名:男の決意、そして … その結果 作家名:鮎風 遊