予言者
「こらこら、早く起きなさい。遅刻するよ!」
目が醒めたとき、柿崎の視野を占領していたのは、すっかり出掛ける支度を整えた瑠美だった。化粧は勿論のこと、昨夜とは異なるスーツを着用し、肩にはショルダーバッグのベルトが掛けられている。
「お、おはようございます」
瑠美は床から拾い上げた柿崎の衣服ひと揃いを、ベッドに投げて寄越した。スーツとワイシャツ、ネクタイ、そして下着である。
「洗面所に剃刀もあるからね。ちゃんと髭剃って出かけるのよ!」
柿崎は自分が全裸で寝ていたことに焦りを覚えた。瑠美のベッドで寝ていたのだった。
「泊めて頂いたんですね」
「じゃなきゃそこで目覚めるわけないでしょ。先に行くよ。ちゃんと玄関のドアをロックしてよね」
「はい」
瑠美は出て行った。八畳くらいの部屋を見回すと、幾つか縫いぐるみがあったり、三面鏡があったりと、そこは正しく女性の部屋である。化粧品の匂いも漂っている。カーテンをよく見ると、細かいハートの模様だ。