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TAKARA 未来
TAKARA 未来
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犯人はわたし?~加山刑事の捜査日誌

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「駒沢君は、どうして手袋をはめていなかったんだ」
「同じことに気がついたようだね、阿賀佐警部」
 栗巣警部は、既にわかっているような表情だ。
「駒沢警部補が、この建物に入る前、我々同様、手袋をはめる姿を見ています」
 関本巡査部長の報告に、容疑者一同はうなずいた。

 ルミノール反応は、和代を抱えた俺と、和代の伝言を聞こうとして、耳を近づけた愛野警部補から検出
された。
 検査するまでもなく、彼女のおびただしい血を吸い込んで、背広やシャツが赤く染まった俺が反応するのは
仕方ないだろう。愛野警部補のネクタイにも、かすかにこびりついたようだ。
 愛野警部補は、検査結果を受け、苦笑いを浮かべた。

 この間にも、続々と鑑識結果が判明した。
 ベランダの開いている掃き出し窓には、古くて判別不可能な指紋しかついていないこと。
 そこに伸びている桜の枝は、あまり丈夫でないこと。
 その枝は、皮がすれていて久しく、今回、逃走に使用したかどうか、科学的には判定不可能なこと。
 桜の周囲の土は、雑草が生い茂り、そこに降りて逃走したかどうか、これも科学的には判定不可能なこと。

 そして……和代のハンドバッグから、思わぬ物が発見された。
 それは、小さなビニール袋に入った、白い粉だった。

「覚せい剤か?」
 鈴村が、場違いな大声を上げた。
「大麻関連の捜査に来た本人が、覚せい剤を所有していたなんて、洒落にもならないじゃないか」
「鈴村! 和代に限って、そんなことはありえんぞ!」
 俺はむきになり、鈴村に食ってかかった。
「二人とも落ち着いて」
 と、穏やかな表情で、栗巣警部は、俺たちをなだめた。
「分析しなければわからないが、覚せい剤の可能性が高いだろう。しかし、そうだからと言って、駒沢君の持ち物だと
は、私は思わない」
「栗巣警部、ありがとうございます」
「加山君、お礼は無用だよ。……駒沢君が警察官になった理由の一つに、学生時代の知人が覚せい剤中毒になって
死亡したことがあるんだ。覚せい剤・大麻などの薬物を異常なまで、嫌悪しているのはそのためだ」
 そう言われてみれば、和代は医者で薬をもらうことも、生前、嫌っていたことを思い出した。
「そんな彼女が、覚せい剤を所持する訳はない。それにだ……今回の捜索目的について、私と阿賀佐警部が、事前に
彼女から、相談を受けていたこともある」
「この捜索は、普通の家宅捜索とは違うんだ」
 栗巣警部の隣で、大柄な阿賀佐警部が口を出して、
「誠に残念ながら、本庁内部で、押収した覚せい剤などを、再度、暴力団に横流ししている者がいる。そのこと
に気がついた彼女が、今回、罠をかけるために、この捜索を手配したのだよ」
「罠? どういう意味ですか?」
 表情に、緊張の色が走った愛野警部補が、やや動揺した声で尋ねた。