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TAKARA 未来
TAKARA 未来
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犯人はわたし?~加山刑事の捜査日誌

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3:誰が殺したか



 本庁から、応援が到着した。

 俺たちは、誰も現場から離れず待機していた。
 大勢が訪れているのか、建物の内外が急に騒がしくなり、せみよりも刑事の方が多いではないかと感じられる。
 現職刑事が、捜査中に殺害された点を重視したのか、本庁でも名警部と評判の高い、栗巣(くりす)警部と、
阿賀佐(あがさ)警部の両名がやってきた。

「残念ながら君達は、容疑者だ!」
 開口一番、栗巣警部が太い声を、俺たちに浴びせた。
「警部、それはどういう意味ですか?」
 愛野警部補が、首をひねりながら、彼と同年代の名警部に、不服そうに質問した。
「説明しよう。このニ階に来るまでに、周辺にいた刑事に、誰もここを出入りした者がいないことを確認している。また、念のため、応援を入れて周囲並びに、草木で死角になっている敷地内を一斉捜索中だ。今のところ、誰も潜んでいる形跡はない。木に隠れている者も、鈴村君が創作していた倉庫にも、
全く人の気配はない」
「では、この建物内部に誰かが……?」
「もちろん、一斉捜索中だ。建物図面を見たところ、隠し部屋はなさそうだが、周囲も測り地下室もないか確認中だ」
「しかし、俺がニ階に上がった時、階段を降りて来た奴はおりませんでした」
 俺は、名警部に、誰ともすれ違っていないことを伝えた。
「その時、二階の別室に誰かが隠れていた可能性はあるな」
「倉庫にいた私も、容疑者になってしまうのですか」
 巨漢に似合わず、俊敏な動きを見せる鈴村も、上司命令であるとは言え、不服の色を隠そうとしていない。
「仕方ないさ」
 と、四人の中で一番年上の関本巡査部長が、あきらめたように、ため息混じりにつぶやいた。
「形式上だよ」
 阿賀佐警部が、慰めるような口調で、俺たちに語った。

 悔しいことに、俺たちは四人の容疑者になってしまった。もはや、捜査の経緯を見守るしかない。
 だが、二人の名警部の操作方法を間近で見られる、絶好のチャンスだ。
 大いに学ばせてもらうことにしよう。俺のためにも、和代のためにも。

「肺に刺さったナイフによる、失血死が原因です」
 鑑識が、栗巣警部に報告している。容疑者一同は、その場に立ちすくんだまま、黙って聞いている。
「かなり深く刺さっています。両手で握って、思いっきり突き刺したものと推測されます。また、自分で刺した角度
でもありません。明らかに他殺です」
「まだ乾ききっていない血が、おびただしいのもうなずけるな。気の毒だが、四人には、ルミノール反応検査をして
もらおう」

 俺たちが検査を受けている間に、様々なことが判明していた。
 凶器のナイフには、全く指紋がついていないこと。
 床に落ちていた拳銃は、登録番号から和代の所有品に間違いがなく、しかも発射された形跡はないこと。
 その拳銃からは、直前に両手で構えて握っていたと思われた、彼女の真新しい指紋が検出されたこと。

「おかしいなあ」
 阿賀佐警部が、ハスキーボイスでうなった。