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TAKARA 未来
TAKARA 未来
novelistID. 29325
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犯人はわたし?~加山刑事の捜査日誌

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「では、聞かせてくれたまえ」
 と、栗巣警部が話を切り出した。

 会議室の一つを使用して、栗巣警部・阿賀佐警部と四人の容疑者が一同に会した。
 呼ぶまで、他に誰にも来ないように、阿賀佐警部が厳命している。

 最初に、鈴村が俺を犯人だと考えた解釈を、鈴村自身から伝えさせ、それに対する別解釈を俺が伝えた。
「可能性がある……と言う程度であって、犯人を特定する解釈ではないな」
 阿賀佐警部の言葉に、鈴村は、恥ずかしそうに巨体を縮めた。
「和代の部屋で見つけた本でわかりました」
 と、俺は新しい解釈を示した。
「この”僧正殺人事件”は、有名なマザーグースを題材にしています。クックロビン又はコックロビンが殺された
歌です」
「クックロビンを殺したのは誰、って歌だったね」
 愛野警部補の言葉に、俺は、大きくうなずいた。
「そうです。クックロビンとは駒鳥のことです。駒鳥、つまり、駒沢和代自身のことを言おうとしたんじゃないで
しょうか」
 栗巣警部が、険しい表情になった。
「そうすると……続けたまえ」
「クックロビンを殺したのは誰。それに答えて、わたしが殺したと言った、雀が」
「雀だって?」
 驚いたような声を、関本巡査部長が発した。
「しかし、雀なんて、全くナンセンスじゃないか、今回は」
「いえ、関本巡査部長。この中に一人、雀がいます。洒落でしょうが、雀、すずめ……”鈴村の奴め”とでも言えば」
「何だって、こいつっ!」
 元柔道部員が立ち上がって、俺につかみかかろうとする。
「そんな駄洒落で、俺が犯人だって言おうとするのか。それぐらいならば、”犯人はわたしの彼”の方が、まだ可能性が
高いじゃないか」
 興奮する鈴村を、愛野警部補がなだめながら抑えてくれた。そうでなければ、絞め殺されてしまったかもしれない。
「加山君」
 と、愛野警部補は、鈴村を座らせながら、
「マザーグースの歌で、鈴村君を犯人と断定するには、少々無理があるのではないかな。マザーグースがらみならば、
クックロビンを、コックロビンと言い換えたならば、ここにいる、関本君のことを指しているとも考えられるよ」
「私が?」
 巡査部長の不安げな顔つきに、警部補は穏やかに言った。
「コック、つまり調理師免許のある関本君のこととも言える……可能性の話だ、あくまでも。要するに、何とでも解釈
できると思う。決め手にはならない」
「その通りだ」
 と、栗巣警部が同意した。
「加山君も鈴村君も、ダイイング・メッセージにこだわりすぎなんだよ。いいかね、これは推理クイズではなく、現実の犯罪
だということを忘れないでほしい」
 そのような栗巣警部の指摘に、阿賀佐警部が続けた。
「ダイイング・メッセージについて、私と栗巣警部が考えた例ならば、こんなこともある。”わたし”つまり、”和を足す”
と一つの言葉になるような例だ。加山君の名前に”和”を足すと、”わかやま”すなわち和歌山県(確か、憲治だったね、君
の名は)になり、和歌山県出身の誰かが関連しているとかも考えられた。しかし、和歌山県出身者は四人の中にはいない
し、仮にいたとしても関係ない。……こんなことまで言い出せば、もはやダイイング・メッセージではなく、言葉遊びの世界
にすぎない」
「ダイイング・メッセージが解ければ、事件も解決するなんてクイズじゃないから、安易に考えてはいかん。いったん、彼女
の言葉を忘れて、事件そのものを再構成すべきだ」
「お言葉はわかりますが、栗巣警部。再構成して、犯人が誰かわかるのでしょうか、現段階の手がかりで?」
 興奮が静まった鈴村が、横目で俺をにらみながら、栗巣警部に尋ねた。
「加山のように、まるで俺を陥れるために、このようにみんなで集まる機会を作られては、今後困りますから」
「先に、俺に銃を向けて脅したのは、お前じゃないか!」
 俺は、先ほどの光景を思い起こしながら、鈴村をにらみ返して怒鳴った。

「落ち着きたまえ、二人とも」
 栗巣警部が、穏やかな口調で若い二人をなだめた。
「鈴村君の行為は、弾丸を抜いていたそうだが、我々がやってはいけない脅迫めいたことだ。そのことは、後でしっかり追求
させてもらう。覚悟は決めておきたまえ、やりすぎたことに」
「反省しています」
「さしあたっては、駒沢君の殺人事件が優先事項になる。そこで、今の鈴村君の質問に答えることから行おう……現在、わか
っていることは何か」
 栗巣警部は、阿賀佐警部に目配せした。
「既に、真犯人が誰か、我々にはわかっている!」