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TAKARA 未来
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novelistID. 29325
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犯人はわたし?~加山刑事の捜査日誌

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 ここまでの報告を分析しながら、俺は、自分の席で、大きなため息をついた。
 これでは、俺が犯人になってしまう危険性が高い。
 ”わたし”とは、一体何を意味しているのか?
 犯人名なのか? それとも別の意味なのか?
 そういえばあの時、和代は、俺にではなく、上司の愛野警部補の方を向いていた。
 俺が、推理面では頼りなく思い、警部補に伝えたかったのか? 
 それとも、愛野警部補を指し示そうとしていたのか、真犯人として?
 いや、他の何かなのか?

 和代は司法解剖され、死因は検死結果通りで、毒物その他の痕跡・外的な傷もなかった。身体内部に病気もなく、実に
健康体そのものだったそうだ。
 それなのに……。

 汗臭い香りが近づいてきて、悩む俺の肩に、後ろから誰かの手が触れた。

「鈴村!」
俺は振り返りながら、その大きな存在を確認した。
「加山、同期のよしみで尋ねたい」
「何だ?」
「声が暗いな。まあ、仕方ないか。……お前、本当は犯人だってことはないだろうな?」
「当たり前だろう。気が済むまで、何十回でも言ってやる。俺は、愛する和代と結婚したかった。犯人を憎んでいる」
「信じよう。俺もこの体重から、犯行不可能だ。俺たち二人は、容疑者からはずれるとみていいだろう」
「俺は、何も反証のない、自己満足の世界にすぎないぞ」
「この際、それは目をつぶるよ」
 鈴村は、茶目っ気たっぷりにウインクした。
「一つ、いい情報を与えるよ。彼女は、パズルやミステリーマニアだっただろう?」
「知っているよ。俺は苦手で、よくからかわれていたからな、和代に」
 かつて、柔道オリンピック選手候補にもなった鈴村は、声をひそめた。
「彼女の夢はパズル作家だったそうじゃないか。お前、彼女の部屋の鍵をまだ持っているだろう?」
「ああ」
「折をみて、彼女の部屋に遺品整理のためとか理由をつけ、何か今回のダイイング・メッセージのヒントになるものがないか、探してみたらどうだ」
「……いい考えかもしれないなあ」
 鈴村の広い肩越しに、俺たちをのぞくように見ている、愛野警部補・関本巡査部長のしかめっつらが目に映った。