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TAKARA 未来
TAKARA 未来
novelistID. 29325
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犯人はわたし?~加山刑事の捜査日誌

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4:誰が怪しいか



 各人の取調べの経緯は省略し、明らかになった証言を示そう。
 なお、家宅捜索の直前、五人の時計・携帯電話の表示時刻を合わせているので、複数の時計で確認できた時刻
については、信憑性が高いものと思われる。
 また、和代は、一人で、二階を捜索する予定になっていた。
 当然のことながら、身体検査の結果、不審な物を所有している人も、肉体に怪我をしている者もいなかったことを、
ここで強調しておこう。

◎愛野 警部補 :一階リビングを捜索
  古びて革のいたんでいる、応接セットの中身を調べていた時、階段を上がっていく茶色の服の男――俺を、開
 いていたドア越しに確認していると証言(時間を見たら、3時58分だったとのこと)。ただし、俺が上がる前は、
 階段が見えない位置にいたので、その前に階段を使用した者がいたか確認できないそうである。
  また、俺からのメール着信前に、その階段を使用した者は見ていないと断言している(手すりが縦格子にな
 っていて、警部補のいたと言う位置から、人間が隠れて昇降することは不可能である)。
  俺を除く三人の中で、最も早く二階に駆けつけている。
 階段を駆け上る時、キッチン方向から、長身の関本巡査部長が向かってきたのを目撃している。

◎関本 巡査部長:一階キッチンを捜索
  床下収納庫を取り出し、背広を脱いで、床下にもぐって捜索していたと証言。ポケットに用意していた懐中電灯で、
 白蟻の発生している床下をのぞいていた時、俺からのメールを着信したそうだ。
  慌てて、黒い背広を羽織って駆けつけようとして、先に階段を駆け上がる愛野警部補の姿を目撃している。
  巡査部長が階段の踊り場に到着した時、玄関が開き、外から鈴村が入ってきたことを確認している。

◎鈴村 巡査長 :裏庭倉庫を捜索
  鍵のかかっていない、裏庭の倉庫を捜索していた時、暑いから、その扉を開けたままにしていたそうだ。
 せみの鳴き声がうるさく、仮にベランダ側の庭で、誰かが飛び降りたり、あるいはそこを走り抜けたとしても、
 その音は聞こえなかったと証言。
  俺からのメールを受け、慌てて玄関から入り、階段を上がりつつある、関本巡査部長に気がついたそうだ。
  蛇足だが、彼は体に似合わず、走るスピードは早い。
  
◎加山(俺)  :一階浴室を捜索
  部屋に入って、変わり果てた彼女にすぐ気が付いたと俺は、強調して説明した。その時、室内には他に誰も
 いなかったとも。
  倒れている和代を抱き起こした時、胸から血が流れ出していた。凶器のナイフには、刑事の本能から、その
 時、触ってはいない。
  
 共通していることは、階段を降りてくる人間を見た者がいないことである。
 メールはともかく、和代が事前に、俺以外の誰かと、二階で会う約束をしていた可能性も考えられる。
 栗巣・阿賀佐両警部共に、その点を皆に問いただしたが、誰もそのような約束はしていないと否定している。
 やれやれ、俺達四人、とりわけ俺が真っ先に疑われるのも、この状況では仕方あるまい。
 和代が、いの一番に俺を呼んでくれたのは、恋人としてはうれしい。しかし、せめて四人同時にメールしてくれたら、
事態は変わったことだろう。
 和代は、一体、どうするつもりだったのだろうか?
 
 そういえば、ハンドバッグから見つかった粉は、分析の結果、予想通り、高純度の覚せい剤だったと報告があった。
 犯人が入れたものと、栗巣警部・阿賀佐警部はにらんでいるそうだ。
 また、彼女の携帯通話・メール記録を改ざんや削除をされた痕跡はなく、俺たち四人がその場で使用していた
携帯――その場で、複数保持していた者はいない――も同じく、怪しい形跡は全くなかったとの報告を聞いてい
る。