犯人はわたし?~加山刑事の捜査日誌
「心配無用だよ、関本君」
栗巣警部は、穏やかな表情になって、
「ここから、昨夜、覚せい剤などを運び出したことは、別の班の張り込みで判明している。移動先も突き止めた。
君達が、ここで偽の捜索をしているのと同じ頃、組織を摘発し、一斉に逮捕して、証拠品を押収することに成功したとの報告が入っている」
「それじゃあ……?」
「そう、想像通り。今回は、この二面作戦だったんだ」
「ならば、逮捕した組織を取り調べれば、内応している者の正体が、既にわかっていませんか?」
栗巣警部の顔つきに、暗い色が射した。
「それがうまくいっていない。組織の連中は、君たちいずれかであることを誰も承知していないらしい。電話でやりとりするだけで、面識がないそうだ。どうやら、
もっと大きな別組織があり、そこを通じて横流し情報を得ていたようだ」
「その別組織は、末端の何人かしか、我々にはわかっていない」
悔しそうに、阿賀佐警部がつぶやいた。
「だからこそ、駒沢君を殺した犯人を逮捕することで、その仲間の刑事を挙げるしかない」
そうなると、状況から、俺が最有力容疑者であることに変更はなさそうだ。
何としても、この嫌疑を晴らす方法はないだろうか?
作品名:犯人はわたし?~加山刑事の捜査日誌 作家名:TAKARA 未来