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TAKARA 未来
TAKARA 未来
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犯人はわたし?~加山刑事の捜査日誌

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「そのように考えると、駒沢君の行動の説明がつく。なぜ、彼女が手袋をはずしたのか? それは、この建物を捜索
することがわかっている以上、君達の誰かが、裏で通じている組織に情報を流すと考えたからだ。残念ながら、誰が連絡
したのか、彼女はつきとめられなかったと、報告があった。今日、ここがもぬけの殻だと言う事は承知しており、何か、
証拠品になるような物は残っていないと踏んでいた」
「それと、手袋と何の関係がありますか?」
 俺とは年齢で二周り年上の、関本巡査部長が尋ねた。
「証拠品を扱う可能性はないことが、第一点だ。そして、問題になりそうな指紋は、すべて拭き取られているだろうと
考えたのが第二点。第三点が最も重要だが、本庁随一の射撃の名手である彼女が、拳銃を手にするのに邪魔
な手袋を、自らはずしたことと思われる。引き金に指をかけるのに、彼女は手袋はいやだと、常に口にしていた」
「駒沢君は、それならば、我々の誰かを撃つつもりだったのでしょうか」
 唇をへの字に曲げながら、愛野警部補はうなった。
「いや、拳銃を構えて、容疑者の不意をつくつもりだったのだろう。彼女が、実戦で撃ったことはなかったそうだか
ら」
「そうなるとですね」
 と、鈴村が、横目で、ちらちらと俺を見ながら、
「駒沢君に呼ばれて、二階に来た、加山が最有力容疑者になると考えていいのですか」
 俺の額に、熱波が訪れたのがわかった。
「冗談じゃない!」
 同期の鈴村に、語気荒く詰め寄った。
「俺がここに来た時、既に和代は、仰向けに倒れていたんだ、血まみれで。驚いて抱きかかえ、電話ではまどろっこしいか
ら、間髪入れず、お前達にメールで伝えたんだ。それに……誰が、誰が、結婚する予定の彼女を殺すものか!」
 涙が、人前をはばからず、あふれ落ちてきた。

「駒沢君が、加山君以外を呼んでいないことは、彼女の通話記録・メール記録から明らかなことは間違いない」
 阿賀佐警部が、鈴村を見ながら、
「メールや通話記録が消されているかもしれないから、専門家による解析結果待ちで考えよう。だが、別の
問題もある。……覚せい剤と思われる袋には、全く指紋がないんだ。彼女が触っていないことは確かだろう。
バッグの中にある、他の品物にはすべて、彼女の指紋がついている。やはり、犯人が忍び込ませたものだろう。
ただ、それをいつ入れたのかが不明だ」
「それならば、犯人が、犯行前後に入れたことで確かだと思います」
「なぜかね、愛野君」
 俺より、丁度十歳年上の警部補は、この点では自信をもって、阿賀佐警部に説明した。
「ハンドバッグの中に、駒沢君の手袋が入っていたそうですね。それをしまう時に入っていれば、彼女は気がついて、
手に触れたと考えられます」
「なるほど。……続けたまえ」
「また、ここに来る前、本庁で、彼女はバッグの中身を、盛んに素手でかき回すように触っていました。その時、
入っていたならば、当然気がついたはずです。仮に、見落としたとしても、指紋の一部がついたと思われ
ます」
「見事だ!」
 両警部は、異口同音にほめ言葉を伝えた。
「しかし、そこまでわかっていたならば、ここを利用していた組織を、みうみす見逃したのは失敗じゃないです
か?」
 巡査部長の疑問に、栗巣警部は即座に否定した。