【第九回・参】瞳水晶
「かるらんかるらん」
阿修羅が迦楼羅を呼んだ
「顔緩んでる緩んでる」
迦楼羅がハッとした
「んんっ;」
軽く咳払いをして迦楼羅が誤魔化す
「しゃしゃしゃんの話してるかるらん凄く楽しそうだね~」
悠助が迦楼羅を見て言った
「な…; そ…そう…か?;」
迦楼羅が聞く
「うん!!」
悠助が頷いた
「…そうか…」
迦楼羅がふっと微笑んだ
「ハイ先生」
京助が挙手した
「なんだ? 京助」
迦楼羅が京助を見て言う
「ぶっちゃけ単刀直入にお聞きします。沙紗さんとはどこまでいったんですか」
「ブハッ!!;」
京助が聞くと何故か阿修羅が噴出した
「そんな遠くまでは行ってはおらんぞ?」
「ブッ!!;」
迦楼羅が真顔で答えるとまたも阿修羅が噴出した
「あっくんにいちゃん大丈夫?」
悠助が阿修羅を見て言う
「あのな鳥類この場合の何処まで行ったかってのはだな…手を繋いだとか抱きしめたとかの…」
京助が迦楼羅に説明する
「最近のお子様は大人だねぇ…」
阿修羅が遠い目をして言う
「そこに腰掛けないでくださいと何度言いましたか?」
「いだだだだだだッ!!;」
迦楼羅の前髪を笑顔で沙紗が引っ張りながら言う
「仕方なかろう!!; 他に座る場所がないのだ!;」
迦楼羅が返す
「では出て行ってください」
そんな迦楼羅に沙紗が淡白に答えた
「沙紗姉様!! …あ…迦楼羅様もいらっしゃったんですか」
屋敷から離れた沙紗の部屋に駆け込んできた沙汰が迦楼羅に一礼をした
「いては駄目か」
迦楼羅が言うと沙紗がまた迦楼羅の髪を強く引っ張る
「何をするたわけッ!!;」
「言ったでしょうそんな口の利き方では誰も近寄らないと…何ですか?沙汰」
迦楼羅の罵倒を軽く受け流した沙紗が沙汰に聞く
「あ…いえ…星が綺麗だったので一緒にと…」
沙汰が小さく答えた
「星?」
沙紗が迦楼羅の髪を放し窓へと歩いて空を見上げた
「ここよりも庭の方がよく見えます! 沙紗姉様!!」
沙汰が小走りで沙紗に近付くと手を掴んだ
「そんなに急がなくても星は逃げませんよ沙汰」
沙紗が笑いながら沙汰に手を引かれて部屋を出て行った
「…なんなんだ…;」
二人が出て行った後 迦楼羅がボソッと呟いた
「ね? 凄いでしょう?」
沙汰が嬉しそうに沙紗を見て言う
「本当…今日は星が…」
石段を降りて庭に足をつけた沙紗が夜空を見上げて微笑んだ
「星が綺麗に見える…」
そう言いながら沙紗が空に向けて手を伸ばした
「無理ですよ沙紗姉様;」
沙汰が笑いながら言う
「でも届きそうでしょう?」
両手を空に伸ばした沙紗が笑う
「二人して何をしているのかと思ったら…」
作品名:【第九回・参】瞳水晶 作家名:島原あゆむ