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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第九回・参】瞳水晶

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「その日沙紗は薬となる薬草を探しに行ってな…」
迦楼羅が言った
「その邪魔でもしたのかお前は」
京助が突っ込むと迦楼羅が首を振った
「ワシは一匹の虎を殺めた…良かれと思ってやったことだったのだが…」
「かるらん虎殺したの?」
悠助が聞いた
「…ああ…そうだ」
迦楼羅が答えると悠助が黙り込んだ
「…何かワケあったからだろ?」
悠助を見た後京助が迦楼羅に聞いた
「沙紗を襲っていたのだ」
迦楼羅が答える

紅蓮の炎が虎の体を覆い虎が地面を転がりまわっている様を一体何が起こったのかわからない沙紗はしばらく呆然と見ていたがハッとして立ち上がり自分の上着で虎を叩き始めた
「何を…!!」
迦楼羅が声を上げた
「貴方こそなんてことを…ッ!!」
沙紗が懸命にに虎を上着で叩きながら言う
「お前を襲っていたのだぞ!?」
迦楼羅が言うとぐったりと動かなくなった虎を見た後沙紗が迦楼羅を見た
「…貴方は…」
そして唇をかみしめて大股で迦楼羅に近づいてきた

バキッ

沙紗の拳が迦楼羅の左頬に当たったかと思うと痛々しい音と共に迦楼羅が後ろに倒れた
「な…何をするのだたわけッ!!;」
左頬を押さえた迦楼羅が怒鳴る
「貴方は…ッ…」
迦楼羅を睨む沙紗の目から涙が流れた
カサッという音に迦楼羅が音の方を見ると草わらから何かが飛び出し黒い塊となった虎の傍に駆けて行く
「…ニー…」
まだ熱覚めやらぬ焼けた虎に擦り寄ることが出来ずにいたのは子虎
「…子供…か…?」
殴られたことで鼻から血が出てきた迦楼羅がそれを拭いながら呟いた
「…ごめんなさい…」
沙紗が膝を付き子虎に手を差し出した
「何故お前が謝る」
迦楼羅が聞いた
「この虎はお前を…」
「私がこの虎の領域に入ったから」
沙紗が言う
「お前を襲って…」
「大切なものがあれば害をなすものに向かい行くのは当たり前です」
迦楼羅が言うと沙紗が声を震わせて言った
「私も言いました沙汰と沙羅に害をなすならば貴方を手にかけると」
威嚇のポーズを取る子虎に手を差し出したままで沙紗が言う
「だからワシは…!!」
「死するべきは私でした」
沙紗がゆっくりと立ち上がった
「この虎は…何も悪くなかった…私がこの場所に来なければ良かったこと…」
黒い塊となった虎に沙紗が握っていた自分の上着をかけた
「貴方は私の運命にまで害をなす存在なのですね天の使者様」
背を向けたままで沙紗が迦楼羅に言う
「ではお前はこの虎に殺されても良かったというのか!?」
迦楼羅が怒鳴ると沙紗が振り向いた
「ならば! この虎が死しても良かったというのですか!?」
沙紗が怒鳴り返した
「言ったでしょう!? 私がこの虎の領域に入ったと!! なのに何故この虎の方が…死ななければならなかったんです!?」
「ワシが悪いのか!?」
「誰の貴方が悪いとは言ってはいないではないですか!!!」
「そうきこえるのだ!!」
「聞こえるだけでしょう!?」
「言っているから聞こえるのではないかたわけッ!!」
「そんな口の利き方するから誰も貴方に近付こうとしないんですよッ!!」
「だッ!!; 髪を引っ張るなッ!!;」
二人がギャーギャーと言葉合戦をし始めた

「…貴方は…」
迦楼羅の髪から沙紗が手を離した
「死の恐怖というものを感じた事がないのでしょうね」
沙紗が静かに言った後子虎のほうを振り返った
「…ああ…そうかもしれん…」
迦楼羅が言う
「…そうですか…」
沙紗が小さく返事をした
「…先に戻ってください天の使者様…」
「迦楼羅だ」
沙紗が言うと迦楼羅が返したが沙紗は何も言わなかった