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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第九回・参】瞳水晶

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「沙紗様おやめください!!;」
木の格子窓から上がる湯気と共に侍女の声がする
「旦那様に知れたら…;」
「知られたら私を呼びなさい」
「沙紗様!!;」
おろおろする侍女に構わず沙紗が竈にかかる鍋の蓋を開ける
「私が勝手に手伝っているのです」
長箸で鍋の中の野菜に火が通っているか確かめながら沙紗が言った
「何を騒いでいるのだ…」
「迦楼羅様!!」
迦楼羅が台所に入ってくるなり数人の侍女から黄色いざわめきが起こる
「口より手を動かしてください」
迦楼羅に目もくれず沙紗が給仕の侍女に言った
「…何事なのだ?」
迦楼羅が近くにいた侍女に聞く
「はい…それが給仕の者が二人ほど流行の病で床につきまして…沙紗様が…」
「余計なことは言わなくてもいいです」
沙紗がピシャリというと侍女が下がった
「ほら!! 手を動かしてくださいと言ったでしょう!!」
沙紗が少し声を張り上げて言うと侍女等が慌てて持ち場に着き始める
「台所は男子禁制即刻立ち退きなさい」
ようやくいつもの台所風景になったのを見た後沙紗が迦楼羅を鋭く見て言った
「な…;」
鋭い視線を向けられて迦楼羅が言葉をなくす
「ワシは何も…;」
「立ち退きなさい」
何か言おうとした迦楼羅を一瞥すると沙紗は背中を向けた
「何もしておらんではないかッ!!;」
迦楼羅が怒鳴る
「うるさいですよ天の使者様」
沙紗が背中を向けたまま言う
「迦楼羅だ!!;」
迦楼羅が再び怒鳴る
「何をして…迦楼羅様?」
布の擦れる音と共に沙羅が数人の侍女と台所に入ってきた
「沙羅様…!!」
台所にいた給仕の侍女が一斉に頭を下げる
「沙紗…貴方はまた…」
沙羅が沙紗を驚きの表情で見た後微笑を浮かべた
「今日は何かしら?」
沙羅が笑いながら沙紗に聞く
「食べてからのお楽しみ」
沙紗が背中を向けたままで言った
「わかりました…さ、迦楼羅様…ここは男子禁制です」
沙羅が迦楼羅に軽く頭を下げて言うと台所から出て行った

「…あやつはいつもああなのか?」
沙羅の少し後ろを歩く迦楼羅が聞いた
「ええ…そうです」
沙羅が答えた
「名家の娘らしかぬ…とお思いでしょう? でも私はそんな沙紗が好きなのです」
振り返って沙羅が笑う
「見ておわかりのように沙紗と私と沙汰は本当の兄弟ではありません…沙紗は体の弱かった私の話し相手として養女にきたのです」
ゆっくりと歩き出した沙羅が言った
「そうか…」
沙羅の後ろを沙羅と距離を置いて迦楼羅が歩く
「私にないものを沙紗は全て持っている…私はそんな沙紗を誇りに思います」
部屋の前で沙羅が足を止めた
「書の時間ゆえ…失礼いたします迦楼羅様」
沙羅が軽く頭を下げて部屋に入っていった
「迦楼羅様!!」