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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第九回・参】瞳水晶

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いつものようにあの優しい香りがしていつものようにきちんと片付いてきる沙紗の部屋に迦楼羅が足を踏み入れた
「…沙紗?」
いつもと違ったのは灯りが灯っていなかったということ
「だッ;」
暗闇の中で迦楼羅が何かに躓いてコケた
「ッ~;」
額を何かにぶつけた迦楼羅が右掌に温かみを感じソレをペタペタと触るとソレが動いた
「…なんだ?」
「…何だは貴方です」
迦楼羅が呟くと沙紗の声がした
「沙紗…か?;」
迦楼羅が聞く
「…ここは私の部屋です…私がいておかしくはないでしょう」
少し震えた声で沙紗が答えた
「そうだが…いるなら灯りくらい灯さんか; 暗くて何も見えんではないか;」
迦楼羅がたぶんそこにいるんであろう沙紗に向かって言う
「…灯けてください…」
少し間を置いて沙紗が言った
「この部屋に…直接…貴方の炎を」
室内灯となる蝋燭に灯りを灯そうとしていた迦楼羅が沙紗の言葉に手を止めた
「…沙紗…?」
いつもと様子が違う沙紗に迦楼羅が声をかけた
「私を…いつかの虎の様にしてください…」
鼻を啜る音と共に沙紗が言う
「…何を…」
「やはりあの時死するべきは私でした…」
消え去りそうに小さい声なのにその沙紗の言葉ははっきりと迦楼羅の耳に届いた
「何を言っているのだ…」
沙紗の言葉に驚いた迦楼羅が言う
「貴方が私の運命をかえた…だから貴方が私の運命を終わらせてください……ッ…お願い…」
沙紗の言葉に小さく嗚咽が混ざった
「泣いて…いるのか?」
迦楼羅が聞く
「あの時私は死すべき存在だった…なのに貴方が私の死に害をなした…だか…」
半分手探りの状態で沙紗の体を見つけた迦楼羅が沙紗を抱きしめた
「…大切なものに害をなすものを手にかけるのは当たり前だと言ったのはお前だろう」
沙紗の耳元で迦楼羅が言う
「ワシは間違ってはいない」
小さく迦楼羅が言った
「…名を呼べ沙紗」
迦楼羅が言うと沙紗が迦楼羅の服を握り締めた
「迦楼羅…」
「まだだ」
「…迦楼羅…ッ」
「まだ…」
沙紗が迦楼羅の服を掴む力を強めると迦楼羅も沙紗をさらに強く抱きしめる
「…ワシの前では強くなくていい…沙紗…ワシに守らせてくれ…」
迦楼羅が自分の腕の中で泣く沙紗にだけ聞こえるよう小さく言った