異 村
私は夢を見ているのか今日の異常な体験を思い出しているのか分からない状態で、障子戸が開くような音を聞いた。部屋の中はまっ暗である。かえって外の方が明るく思えるのは月の光のせいだろうか。外の空気が部屋に入ってきた感じと、懐かしさを感じさせる匂いも入ってきた。普通なら恐怖を感じるであろうこの事態も幽霊などというものでは無く、誰かが入ってきたのだという直観はあって、何だっけこの匂いはと考えたのは一瞬の間だけだった。
無言で布団の中に入り込んだ者は、その柔らかな感触から女性であることは分かった。
私はこれが夢なのか現実なのか曖昧な思いのまま、ただじっとしていた。暗闇では音と匂いと触感に感覚が集中される。私はその触感には心地よさを感じているものの、女の吐息と匂いとを私の頭が否定している。その匂いで、私は小さい頃嗅いだ母親の匂いと顔を思い出してしまったのだ。自分でも意外なくらいに。私は眠っているふりをして、ただじっとしていた。
女の手が私の胸を撫でた。それから遠慮がちにその手は下方に向かった。農作業で荒れているのだろう、その手触りは私にこれは現実、今起こっていることだと確定させた。そして体も求めてはいなかった。私は依然として酔いつぶれて眠っているふうを装った。
女は少し動きをとめ、それからあっけないほどあっという間に布団から出て、開けたままだった入口から出て行った。
私はほとんど抵抗もなく水に浮かんでいて、ちょっとした動きで自在に動き回ることができた。私は喜びに溢れていて、輝いていた。若くて私ごのみの女性が近くに寄ってきた。少し含羞のある顔で私を見る。私が手を伸ばすと、女性はすうっと私にまとわりついた。快感を伴って私たちは一体となり滑るように泳ぎ出した。体をターンさせるごとに喜びは倍加し、私は体中にエネルギーが充満してくるのを感じた。
爆発しそうな充実感に重さを感じて私は半覚醒する。夢を反芻し、そして現実の感覚とつながっていること、さらに女性が私の上にまたがっているのを感じた。女性が動き、私はエネルギーの放出をしていた。女性が覆い被さってきて、私はその感触と甘い匂いに身を任せて、目をつぶった。