小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ピュワ・アイズ(人気女優殺人事件)

INDEX|6ページ/18ページ|

次のページ前のページ
 

いまさら隠そうとしてもダメよ、とばかり美香の楽屋をのぞく。智美が目を見開き驚いた表情になった。
「一体どうしたの?」
ばっと開いた部屋に中は明らかに何ものかにあらされていた。そのなかで美香が呆然とたたずんでいた。向こう側にある筈の衣装類が、何ものかにずたずたに切り裂かれぼろ衣のようにかかっていた。
「どうも悪質なファンが忍び込んで、美香に嫌がらせするのよ。」
と壁を指差した。先には赤いペンキの様なものが筆書きしてあった。
“場違いに咲く花は元の園で咲き誇れ。―伝説の庭師―“
「アイドル時代に戻れってことかしら?」
「嫌な感じだよな。」
智美に米ちゃんがカメラを回しなから答えた。一同言葉をのんだ。陰湿な悪意を感じる。
「でも、これじゃ、本番どうするの?」
奈菜はスタッフの香苗に聞いた。劇で使う衣装は全部使えそうになかった。今日のレトロなスーツもだ。
「そうなのよ。どれだけ警戒していても、人目を盗んで嫌がらせしていくの。こんなに大胆なのは初めてだけど。」
「最近のマニアは制服まで着こんで、内部に侵入するって言うからね。」
いきなり大きなトラブルを予感させる光景だ。
「衣装は大丈夫。」
男性が割り込んできた。髭面の中年男は誰だろう。そういえばこの人見たことあるな。奈菜は思った。そうだ。団長の本庄敦史(ホンジョウアツシ)だ。
「なんで?」
奈菜は疑問に思った。大丈夫な衣装があるように思えない。
「警戒して一部の衣装を別の部屋に避難させてあるんだ。こんなこと起こるのは嫌だったけどな。」
対策がかえってこの事件のインパクトを印象付けた。

開演前の舞台裏だ。緞帳は上がっていた。ちょうどリハーサルをやっている。
このヴェルディーの「仮面舞踏会」は、ボストン総督のリッカルドの命を狙う秘書レナートと、その妻のアメリアの物語だ。この総督は暗殺者の妻アメリアに思いを寄せている。身分が違い、許されない恋なのだが、仮面舞踏会でその愛を確かめようとする。最後のアメリアとリッカルドとの恋の絡みと、天空を舞ってレナードが舞い降り、リッカルドと対決するシーンが売りだ。アメリアとリッカルドのカラミは、リッカルドの熱い恋の告白と、アメリアの許されない恋に対する後ろめたさと、リッカルドに対する情熱に揺れ動くため、沈黙で受け止める姿に感動するという。そんな心の動きを演技で表現するのはかなりの演技力が必要という。レナードは若手ナンバーワンと言われる、若狭大空だ。切れ長の目はまるで歌舞伎役者のようだ。そういえば楠美香とは熱愛報道があったけ。