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ピュワ・アイズ(人気女優殺人事件)

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相変わらず命令調だった。救いはなにかぶっきらぼうが板についているキャラであることか。
帝都劇場についた。すぐにエキストラショットを撮ると言うので大きな劇場の前でカメラをスタンバイした。
「はじめまして。七瀬奈菜です。上から読んでも下から読んでもナナセナナです。」
ギャグではないが本名だ。でもこういう世界では印象取れるのがいい。親に感謝している。
「今日の『そこんところ教えて!』の語り部は蒲生忠典さんです。彼は演劇界の巨匠で演出家でもあります。彼のロングラン公演と言えば、このヴェルディーの『仮面舞踏会』でしょう。若い女性を中心に大変人気があります。舞台裏の真実をご紹介したいと思います。」
奈菜はぎこちない笑顔で締めた。やはり最初はまだ緊張している。
「オーケーっ!」
どうも抑揚もない、だらけた宗像のOKが入った。でもサワリはつかんだ。
「では、楽屋に案内します。」
と言ったのは劇団スタッフの望月香苗だ。わりと小柄で、眼鏡をかけている。劇団のロゴ入りのジャンパーを着込んでいた。ぞろぞろ中に入った。すると奥の楽屋付近で人だかりが出来ていた。奈菜達は気にも留めなかったが、その前を通った時、男性が顔を出した。望月と顔を会わせると何やら声をかけた。
「まただよ・・・」
それを聞いた香苗は
「やっぱり・・・」
客人の手前ひそひそ話していたが、かえってそれで目立った。密着なのでロケ隊にも興味が出てきた。とくに好奇心旺盛の智美が興味を持った。
「どうも変ねぇ。何かあるのかしら。」
望月もお客にさすがに気にとめたらしく、部屋を閉じようとした。締めようとした扉に楠美香(クスノキミカ)の張り紙が見えた。
(そっか。ここは主演の女優の楠美香の楽屋なんだわ)
蒲生がボストン監督のリッカルド役で主演だ。彼がひそやかに思いを寄せる恋人役のアメリア役の女優だ。アイドルグループ・ホワイトチョコのセンターが卒業して女優転向で今旬な女優だ。若いのに演技力が評価されている。年齢は二十三歳だったかな。芸能レポーターの頭の情報データと照合する。
「美香さんかわいそう・・・」
奈菜はそういったが、望月は
「そう?」
と冷めた感じで、他人事のようにつぶやいた。
(美香さん、嫌われてんのかな・・・)
思わず奈菜は思った。自分の衣装を切り刻まれるのは、耐えがたいと思う。
ディレクターの宗像は黙ったまま無表情に見つめている。あまり興味がなさそうだ。
「いや、何でもないですよ・・・」
「でも、なにか起きているんでしょ?何もないなら見せて!」