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ピュワ・アイズ(人気女優殺人事件)

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昼からの公演に密着すると言う事で、午前十時に帝都劇場に入る予定だった。そこまではロケバスに乗る。智美に付き添われ局の地下駐車場にロケバスが迎えに来ていた。いよいよロケ隊のメンバーとご対面だ。最後にこの二人を乗せるという話だった。
「いままでどうしてたの?」
ぶしつけながら女同士自己紹介が続いていた。地下のちょっとした乗降用のプラットホームで待つ。あたしなんて憧れだけで事務所に飛び込んで、容姿、歌よりなぜかレポートが売れてしまった。レポートは突発的に起きやすいし、現地に向うので条件が悪いとこんな駆け出しでも話が来たのが最初だった。あとは内容を面白くしようと、人にインタビューし、調査し、自分なりのレポートを構成したら、結構ウケタのだった。
「全くの一般人だったのよ。芸能事務所のスカウトがあったけど、なぜか芸能レポーターよ。いまさら、アイドルのオーディションってわけにもいかないし、流れのままに渡ったら、いつの間にか芸能レポーターになってた。」
智美は相手のことが気になるのか、よくあたしのことを聞く。後でわかったが、彼女自身ゴシップ娘で、芸能人に興味があるようだった。
「中にはそういう人がいるらしいね。芸能人は芸能人なんだろうけど、情報屋だからね。」
微妙だな。それ、褒めてんの?確かにあたしの情報に売り値が付いているのには違いない。そうこうするとロケバスが来た。バスの昇降口が開いた。
運転手は若いやせた草食系の男性だ。シャツにパンツ、そしてスタッフジャンパーを着ている。至ってシンプルな服装だ。
「お待たせしました。乗ってください。」
消えそうな声で言う。促され乗り込んだ。
「好きなところにどうぞ。」
今度は小太りの中年男性が声をかけた。パーマをかけていて、額には汗防止のバンドが巻いてある。おしゃれという感じがしない。その向こうに目をつぶった宗像がいる。たしかにイケ面ではあるんだが・・・。バスのドアが閉まり、出発した。都内の道路を走りながら、話が始まった。智美は紹介を始めた。
「運転手は音声、銀板担当の曽根ちゃん。細かい手配は彼がやるわ。そこの太った人が米田さん。カメラクルーよ。あだ名は“米ちゃん”よ。そしてあたしは七瀬さんの付き人。」
「智ちゃん、太いはやだなー。」
米ちゃんがはにかむ。結構シャイな感じだ。本来マネージャーが世話係なのだろうが、奈菜はそんなに売れっ子ではない。井川の本当の仕事は宗像の補助なんだろう。
「奥の人はもう紹介はいいわね?さっき会ってるし。」
智美が終わろうとすると、宗像は手をあげた。
「・・・なーに?」
宗像はつぶった目を開いた。
「そこのレポーターさんに言っておきたいことがある。」
奈菜は少々嫌な気がした。どうもこの人はとっつきにくい。
「このロケ隊では俺がボスだ・・・」
やっぱりと思ったが、仕方ないことだ。彼はただ単に立場を言っているにすぎない。
「俺の言うとおりに動けよ。」