ピュワ・アイズ(人気女優殺人事件)
あれが今後仕事で関わる人なのか。あまりに無愛想。呆れたものだ。それがチーフなの?しばらく声が出なかった。そんな奈菜をよそにジョニーは番組の概要を説明し始めた。
「今度の番組編成でレポーターが今までの正田君からあなたに変わるの。この番組の看板になるの。番組『そこんとこ教えて!』は見たわよね?」
みたも何もレポーター交代で事務所にDVDをたくさん渡された。抜擢で初めての仕事で大いに、はりきってきたのだ。隅から隅まで見てきた。
「この番組は各業界のリーダーたちに密着する番組で、結構視聴率がいいの!」
視聴率のところは自慢なのか声が大きくなった。
「あんたは突撃レポーターとして、ターゲットに密着するの!」
といってそばにいたポニーテールの若い女性を手招きした。女性はカメラをいじっていたが、中断してそばに寄ってきた。奈菜とは同じ世代のようだ。
「紹介するわ。この子はAD(アシスタント・ディレクター)の井川智美よ。ロケ隊ではあんたの身の回りのことを彼女がすることになっているわ。」
最初智美はじーっと奈菜を見ていたが、ニコッとほほ笑んだ。奈菜も反射的にほほ笑んだ。この番組の事を何も知らないのだ。この人気番組の縦軸のレポーターとなると言う事なのだ。まだ駆け出しでそもそも芸能レポーターの仕事は初めてに等しい。それ以外はデズニーランドとかのレポートぐらいしかやったことはない。
「井川智美よ。よろしくね!」
さっきの宗像が無愛想だっただけに、奈菜はようやくほっとした。ジョニーは目の前のセットで行われている収録を指差した。番組の司会の導入と締めだ。司会は九鬼将隆(クキマサタカ)だ。高級なスーツに眼鏡をかけた俳優だ。三十後半だが、落ち着きがある。程よい重みと落ち着きがあるが、地味ではない。主役クラスの俳優で、時代劇からこのような報道まで幅広い活躍をしている。
(九鬼さんだ。本物みちゃった~♪)
奈菜は自分の立場も忘れ、ミーハー路線に入ってしまった。このテレビ局というのは周りに芸能人がうようよして、目移りしてしょうがない。仕事も忘れそうだ。
「本日の語り部は、オペラ舞台の巨人、蒲生忠典(ガモウタダノリ)です。かれは半生を舞台に立ち続けました。この度、帝都劇場でヴェルディーの『仮面舞踏会』のロングランの公演が始まります。その裏側を、七瀬奈菜が密着しました。七瀬は正田から替わった新人です。では、七瀬さん、どうぞ!」
スタジオの九鬼に振られた気がして
「はい?」
と返事してしまった。周りの者は奈菜に注目した。
「バカね!編集するから前後の関係ないの!」
小声でプロデューサーに怒られた。それはそうだ。今から撮るんだ。奈菜はどぎまぎと鼓動が鳴った。収録が終わった九鬼がセットから降りてきた。迷わず奈菜に近づいた。近づいてくるとスターのオーラで圧倒されそうだ。奈菜の前で止まった。奈菜は直視できず目を伏せてしまった。柔和な九鬼の顔に微笑みが浮かんだ。
「ははーん。この人が七瀬さん。いやー、活発そうだ。」
さっきのこともあり、大俳優を前に完全にのぼせあがった。
「さっきの返事は傑作だったよ。聞こえたよ。素直なようだね。今後が面白そうだ。」
といって、じゃあ!と手をあげ去っていった。
「今度の番組編成でレポーターが今までの正田君からあなたに変わるの。この番組の看板になるの。番組『そこんとこ教えて!』は見たわよね?」
みたも何もレポーター交代で事務所にDVDをたくさん渡された。抜擢で初めての仕事で大いに、はりきってきたのだ。隅から隅まで見てきた。
「この番組は各業界のリーダーたちに密着する番組で、結構視聴率がいいの!」
視聴率のところは自慢なのか声が大きくなった。
「あんたは突撃レポーターとして、ターゲットに密着するの!」
といってそばにいたポニーテールの若い女性を手招きした。女性はカメラをいじっていたが、中断してそばに寄ってきた。奈菜とは同じ世代のようだ。
「紹介するわ。この子はAD(アシスタント・ディレクター)の井川智美よ。ロケ隊ではあんたの身の回りのことを彼女がすることになっているわ。」
最初智美はじーっと奈菜を見ていたが、ニコッとほほ笑んだ。奈菜も反射的にほほ笑んだ。この番組の事を何も知らないのだ。この人気番組の縦軸のレポーターとなると言う事なのだ。まだ駆け出しでそもそも芸能レポーターの仕事は初めてに等しい。それ以外はデズニーランドとかのレポートぐらいしかやったことはない。
「井川智美よ。よろしくね!」
さっきの宗像が無愛想だっただけに、奈菜はようやくほっとした。ジョニーは目の前のセットで行われている収録を指差した。番組の司会の導入と締めだ。司会は九鬼将隆(クキマサタカ)だ。高級なスーツに眼鏡をかけた俳優だ。三十後半だが、落ち着きがある。程よい重みと落ち着きがあるが、地味ではない。主役クラスの俳優で、時代劇からこのような報道まで幅広い活躍をしている。
(九鬼さんだ。本物みちゃった~♪)
奈菜は自分の立場も忘れ、ミーハー路線に入ってしまった。このテレビ局というのは周りに芸能人がうようよして、目移りしてしょうがない。仕事も忘れそうだ。
「本日の語り部は、オペラ舞台の巨人、蒲生忠典(ガモウタダノリ)です。かれは半生を舞台に立ち続けました。この度、帝都劇場でヴェルディーの『仮面舞踏会』のロングランの公演が始まります。その裏側を、七瀬奈菜が密着しました。七瀬は正田から替わった新人です。では、七瀬さん、どうぞ!」
スタジオの九鬼に振られた気がして
「はい?」
と返事してしまった。周りの者は奈菜に注目した。
「バカね!編集するから前後の関係ないの!」
小声でプロデューサーに怒られた。それはそうだ。今から撮るんだ。奈菜はどぎまぎと鼓動が鳴った。収録が終わった九鬼がセットから降りてきた。迷わず奈菜に近づいた。近づいてくるとスターのオーラで圧倒されそうだ。奈菜の前で止まった。奈菜は直視できず目を伏せてしまった。柔和な九鬼の顔に微笑みが浮かんだ。
「ははーん。この人が七瀬さん。いやー、活発そうだ。」
さっきのこともあり、大俳優を前に完全にのぼせあがった。
「さっきの返事は傑作だったよ。聞こえたよ。素直なようだね。今後が面白そうだ。」
といって、じゃあ!と手をあげ去っていった。
作品名:ピュワ・アイズ(人気女優殺人事件) 作家名:藤居