真実を纏う蝶
蟻塚(高校生探偵?いつの間に?)
真田「ははは、高校生探偵さんですか。それは頼もしい!真田賢治です。現代アートセンターの館長を務めています。」
館長はおおらかそうにふくよかな男性。何か作業していたか、前掛けをしている。
真田「今のところ何も起きませんが、本当にそんな事件を起こすのでしょうか。ドラマじゃあるまいし・・・」
蟻塚「怪盗ミスター・シーフは必ず来ます。いままで予告通りでなかったことはありません。」
真田「という事は、いまだに逮捕できてないと言う事ですか?」
真田はさりげなく聞いただけだが、蟻塚警部は動揺した。
蟻塚「・・・ええ、今のところ・・・」
真田「いや、それでは最初の逮捕になるんでしょう。」
取り繕ったが、二人がきまづくなった。
真田「『夏の箱根近代美術展』の目玉になってます。あしたの展示終了までに盗むと言ってます。」
蟻塚「警察の威信にかけて、奴の犯行を阻止します。」
真田「しかし、変装も得意という事ですね。どうやって盗むのでしょうか。」
蟻塚「分かりませんね。犯行は単純な手口ではない、というとこでしょうか。白昼堂々、われわれの想定外の手口で。」
あげは「おじ様、それじゃ、怪盗を褒めているような・・・。」
あげはの指摘に気付き、せき払いした。
蟻塚「勿論、今回“も”警備は万全でしょう。今回は警官の配置は勿論、上下に赤外線センサーを取り付け、犯行の瞬間を見逃しません。」
と手で示す先に上下にレールが取り付けられていた。これでは手でさえぎった瞬間警報が鳴る。絵とセンサーとの幅は手もはいらない十センチというところだ。
真田「円山等伯は近代美術の巨匠です。文化的な価値ははかり知れません。それを堂々と盗まれるのは耐えられません。刑事さん。どうかあの絵を守ってください。」
蟻塚「もちろんです。」
場所 アトリエ
学芸員の三沢おさむ、同じく学芸員の小浜愛が作業している。
蟻塚「変わったことはありますか。怪盗ミスター・シーフについての情報を探しています。やつは変装が得意です。人物確認をします。あなたは・・・?」
三沢「ああ、今回の事件っスか?ご苦労様っス。」
三沢「学芸員の三沢おさむっス。絵が好きなもので、展示物の取り扱いをしてるっス。」