真実を纏う蝶
真田「なんてことだ。外側に貼ってあったのか。」
長沢「俺たち気付かなかったのか・・・」
あげは「直接は確認できないし、展示は離れて見ることになりました。それにそれだけ贋作が見抜けないレベルだったってことよ・・・」
と言ってナイロン線を垂らして額縁Aを縦に掛けた。
あげは「Bももちろん掛けます。」
こんどはBの額縁を隣に横向きに掛ける。
真田「確かにこんな感じだ。驚いたな。大きさが一緒でも向きで印象が違う物だ。」
あげは「垂らしたナイロンをこう目立たないようにポールに結びます。」
蟻塚「しかしなぁ、そんなの分かるだろ?」
あげは「そうかしら?この部屋は現代美術と言うだけあって、けっこうシックなへやでしょ?」
部屋全体の壁紙は黒っぽく、照明は少し暗くスポットが当たっている。
あげは「では、お待たせしました。再現します。」
と言って丸めたポスターを抱え、登場した。
愛「ああ、三沢君のかっこうだ。」
あげは「偽物の絵が入ってた額縁の周りにはポールがあって、何かを巻いた跡があったの。それと犯行当時、煙幕の中で何かが抜き出されたような音がした。」
あげは「バサッという音が絵を抜きだしたときの音だとすれば、三沢さんは煙幕の中で横から抜き取ったんでしょうね。このように!」
蟻塚「確かにそんな音だった・・・」
蟻塚「ああ、真横に。これなら赤外線に触れないわけだ!」
引っ張り盗ったアクリル板と「湖畔の少女」を丸めて
あげは「あとはこのように丸めて他の壁紙に紛れ込ませたの。」
一同あっけにとられた
三沢「そんな子供だまし、警官がガードしたら終わりじゃないかよ。」
あげは「だからあなたは更に爆弾があると叫んだ。全くの嘘でも私たちを現場から離れることになったわね。」
暫く押し黙る三沢、やがて逆切れして答える。
三沢「俺がやったと自信があるなら見せてみろ!」
一同黙りこくった。状況的に誰もが行えるトリックだ。
三沢「それみろ!たしかに壁紙はおれしか持ってなかった。でも状況的に、だ。証拠は何だ?だいたい抜き取った絵はどこだ?おれは作業後、何も持ってなかったぞ!」
あげは「三沢さん、まだいいはるの?いいわ、証拠見せてあげる。」
と言って壁紙を交換した場所に向った。三沢は押し黙った。と言うより核心に迫られおびえたようだ。