真実を纏う蝶
あげは「現場に残された犯行の形跡が犯人を示しています。今からここでそれを証明します。あそこがよいでしょう。」
ちょうど絵の掛かってないスペースを指差した。
長沢「なにか必要な物はあるかね。」
あげは「そうですね。大きさの同じ額縁と、アクリル板、それと額に入る二個のカンバスと大きさの同じ絵が欲しいです。それから、両面テープとナイロン線、丸めたポスター数本が欲しいですわ。」
長沢「最後のポスターは何かね?」
あげは「壁紙のかわりです。」
この「壁紙」に三沢は大きく動揺する。
長沢「用意しよう。」
開いている二か所に材料が集められた。
あげは「事件再現をやりやすくするため、小さな額縁にしましたが、同じ大きさの物です。盗まれた円山等伯の「湖畔の少女」をAの額縁、替わりの額縁をBとします。まずは額縁を再現します。」
といってあげはBに「湖畔の少女」としたカンバスAをいれる。
愛「ちょっとー。いきなり間違えてんじゃない。それはAにはいるんでしょ?」
真田「いや、この通りだ。実際Bから出てきている。」
あげは「Bに『湖畔の少女』に贋作を挟みライナー、面材と挟み、額縁を載せます。これでBは良かったですね。」
蟻塚「ああ、この通りだった。」
あげは「それではAに移ります。」
と言ったがいきなり裏のふたをして、トンボで抑えてしまった。
真田「おかしいじゃないか。それでは何も入ってなかったことになる。」
あげは「そうですよ・・・」
他の指摘に知らん顔だ。そしてひっくり返す。
あげは「私が額縁Aで見つけた粘着剤の正体がこれです。」
と言って両面テープを取りだした。それを4つに切ってAの隅に貼った。
もう一方の保護紙をはがし、
あげは「これを『湖畔の少女』の贋作とします。」
と言ってタイトルの書いた白紙を取りだした。
あげは「絵を載せる前にこれも貼らないといけません。」
貼る前に輪にした二枚のナイロン線を用意していた。まず贋作にアクリル板を取り付け、絵を通すようにナイロン線の輪に入れた。そしてテープで止めた。
あげは「ここで初めて絵を載せます。」
愛「いや、そんな・・・」
あげははガラスの外側に張り付けた。