真実を纏う蝶
怒鳴る三沢。爽やかな性格の三沢にしては違和感のある反応だ。
あげは「・・・えっ!?」
驚いて振り返るアゲハ。
蟻塚「俺が許可している。だいたいここが何だと言うんだ?」
三沢「てっきり、現場を荒らしてるかと・・・失礼しました。」
蟻塚「変な奴だな。まあ、警察でもない人間が触っているのは不審だが・・・」
あげは(でも、あれだけの剣幕になるのはへんねぇ・・・)
あげははポールをよく見た。塗料が一部こすったように禿げている。しかも新しいようだ。あげはは見ていてハッと気付いた。そして少し微笑んだ。
あげは(はーん。そういう事か。見えてきたわ・・・という事は・・・)
振り返り蟻塚を見た
あげは(おじ様には悪いけど私が解決させてもらうわ。)
ぶつぶついいながら三沢が盗まれた絵の額縁の向こうの絵を壁から取り外し始めた。
蟻塚「今から現場検証です。規制線張ります。何を始めるんですか。」
三沢「やだなー。ここは離れているんじゃないんですか?それにこの絵の撤去は事前に決められてます。」
蟻塚「本当ですか?」
事務長の長沢に聞く。
長沢「ええ、別の絵と取り換えるんです。誰かに傷を付けられまして。」
三沢「でしょ?刑事さん。」
長沢に言われると納得するしかない。
蟻塚「現場から離れているのでいいでしょう。でも、ここは封鎖します。回って行ってください。」
三沢「分かったっス。」
壁から外し持っていこうとした瞬間
あげは「ちょっと待って。その中身、見せてよ。」
三沢の手をあげはが押さえる。
三沢「なんですか、あなた・・・何の権限で・・・」
その場の空気が凍る。
蟻塚「この子はただの学生だ。あげはちゃん、引いてくれないか?」
蟻塚はあせった。
あげは「べつに何でもありませんわ。ただこの絵に興味もっただけ。何もないなら見せてくれてもいいんじゃないの?」
三沢「ば、バカ言わんでくれ!何で部外者に見せる必要がある?」
あげはの問いに異常なあわてぶりに今度は蟻塚が変に思った。