真実を纏う蝶
あげは「ねぇねぇ、おじ様!それは違うわ。煙は絵の周辺だけだけど、目隠しになるわ。」
蟻塚「目隠し?」
あげは「だって、部屋はコノ字だけど向こう側に非常口があるし・・」
蟻塚「そうだった!非常口を確認しろ!」
行ってみると非常口はあけっぱなしだった。
蟻塚「誰かが逃走したってことか!結局、円山等伯の絵は盗まれたか・・・」
そこへ警官
警官「報告します。この非常口付近、部屋からの逃走経路とおもわれる場所に不審人物は目撃されていません。」
愛「まんまとやられた。一体誰よ、だから隠せって私は言ったのに!」
部屋には困惑が広がっていく。
あげは「でも現実に絵は盗まれている。あの大きな絵が煙のように消えているわ。」
三沢「ミスター・シーフに盗まれて逃げられたことは間違いないっス。」
真田「この件は我が美術館の失態だ。弱ったなぁ・・・」
長沢「人間のすることだ。なにか裏があるはずだ。」
あげは「その通りですね。」
蟻塚「まだ分からないことが多いですが、今からは警察の仕事です。」
勿論捜査権のないあげはは憮然とした。
蟻塚「額縁は壁からはがされた形跡はなし・・・か。」
額縁と赤外線カーテンのスペースにまず警部はぶち当たっている。あんな短時間で重く大きい額縁を取り外し、裏からカンバスを抜きとるしかないのだ。
蟻塚「それに警官が退避するとしても、その後から来た人物はいなかったぞ。」
当時を思い出している。
あげは「指紋をとったら?」
蟻塚「そんなもの、この美術館の人間の指紋でべたべただ。何の参考にもならん・・・それよりこれだ。」
台を持って来させ、カーテン状部の発煙筒を取りだす。
蟻塚「市販のありふれた物だ。あきらかに視界を奪う目的だ。時限の発火装置だ。こりゃ、明らかに計画的だ。誰にでも仕掛けられる物だ。」
あげは「それはあまり参考になりそうにないわね。それより、あのバサッって音なにかしら?」
蟻塚「それが解くカギだな。今のところは分からねぇ。」
三沢「刑事さん、もういいっすか?仕事なんだけど・・・」
忘れてた。現時点、ミスター・シーフ以外の容疑者はいない。
蟻塚「もし何かありましたらお呼びします。」