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椎名 李砂
椎名 李砂
novelistID. 32369
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星屑リング

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おまけに俺も春華とは康生の付き合い=俺とも付き合いとなっているのが、本人達はあまり気にしていないようだから俺も気にしない事にしている。

「どっちにしても『うーたん』は手の届かない存在だから、希少価値があるんだろ」
憧れるにはぴったりのキャラクターだ。
「ふっふっふ・・・それがそうでもないんだな」
何が?と視線を向けられれば
「今度の大会はオンラインじゃないからな。『うーたん』も参加するんだよ!
トーナメントの順番がよければ一回ぐらい当たるかもしれないんだぜ!!」
力説すれば何処か白けたような視線なんてまったく気にしない。
「勝ち上がれば優勝候補の『うーたん』との対戦率は確実になる!」
「まあ、確率だけならな・・・」
裕太は現実的な数値の問題なら握手ぐらいは出来るなと頷く。
「その確率を上げる為に佐鳥あすなにカードを借りる!
 超強力ウルトラレアなら確実に喰いつく話題だろ?」
確かにそうかもしれないがと雅人は頷くが
「女の為に女を騙すなんてサイテー以下だぞ」
「なんとでも言え。『うーたん』以外の女は用済みだ」
キッパリ言えば康生がお前の親が泣いてるぞと呟くのを俺は無視し、紙コップに入ったまずいコーヒーを飲み干した。
「それにカードの約束はしてある」
「そしてメアドの交換してなかったのはお前の落ち度だ」
裕太の突っ込みが一瞬耳が痛かったが
「向うも同じだろ?」
なんて反論するも香月が小さく笑っただけだった。
「まあ、約束してあるなら聞くだけ聞くけどな」
言って康生携帯を取り出して春華と連絡を取ってくれた。
程なくして

「俺だけど」
『珍しいね、こんな時間に』
「今ちょっと良いか?」
『うん。移動中だけどいいよ』
「あのさ、佐鳥の携帯のメアド教えてくれないかな?」
『・・・なんであすなの?』
「あ、いや俺じゃなくって、昴が知りたがってんだよ」
『ふーん。昴がね・・・なんで?』
「なんかカード、何とかレアって言う珍しいカード見せてもらう約束したんだけど、メアド聞きそびれたんだってさ。で、メアド教えてくれって」
『あー・・・あすなぁ』
少し遠くなった声をみんなで聞きながら
「ほんとに大学生だったんだな・・・」
「てゆうか、マジ友達だったんだな」
「アレで俺らとタメだなんて信じられねぇ」
「中学生だと思ってた」
好きな事をほざいていればもしもしと春華の声。
『あのさ、なんだかあすな嫌がってんだけど昴に何やったか聞いてくれない?』
予想外の言葉に康生の疑わしげな視線が投げられた。
いや、俺何もやってないから!少し話しただけなのお前らも知ってるだろ!!!
全力で俺は何もやってない事を主張する前に
「昴が何とかするようなヤツか?」
『そだね。じゃあ、あすなの人見知りの方ね』
「人見知りとかあるなら俺を疑うなよ」
聞えるように言えば春華の陽気な声がゴメンと笑う。
調子のいい女だぜと不貞腐れれば暫らくの間二人が何か話していて
『まあ、あすなのメアドは直接本人に聞いてね』
なんて声が3Dで聞こえたと思ったら
「やあ!」
なんて携帯片手に春華が立っていた。
「な、なんで春華がうちの大学にいるんだよ?!」
驚きに康生がのけぞれば春華の後ろからちょこんと小さな頭が現れた。
「別に私がどこに出没しようと勝手でしょ?」
「いや、さすがに驚くって」
香月が申し訳程度に突っ込むも春華は知らん顔で周囲を見回す。
「まあ、康生の大学に興味ないって言ったら嘘になるんだけど、今日は姫のエスコートに来たんだー」
姫って後ろに隠れてる地味っ子か?なんておもうもその地味っ子は嬉しそうに小さな声を上げたかと思えば、手を目いっぱい伸ばして誰かに見つけてもらうかのように手を大きく振る。
視線を追って探せば、向こうも気づいたというように足をこっちに向けてきた。
「春華ありがとう!行ってくるね」
「うん。行ってらっしゃい」
じゃあねとあいさつを交わせば、人の少ない食堂を小走りに駆けて行ったが、向こうが来る方が早く、半ば俺たちと合流するようにあすなは目的の人物と合流した。
「橘凪…」
ぽつりとその人物の名前を呟けば知り合い?と裕太に聞かれた。
「同じゼミ。話したことねぇ、つーか、男いたのか?」
多少の衝撃に思わず言えば
「同じ高校の同級生よ。あすなと橘は同じバイト仲間だから仲良いよ?」
春華が二人の説明をしている合間にも二人は食堂の出口に向かって歩き出すのを俺は慌てて追いかけた。
「ちょっと待て佐鳥あすな」
思わずその肩をつかんで止める。
おや?というように大きくのけぞるもどんくさそうに見えて絶妙なバランスを保ちながそのけぞった格好で俺を見る。
「えーと…結城君だっけ?」
一応記憶には留めてもらえていたようだが、姿勢を直した佐鳥あすなは何故か橘の服の袖を握りしめて俺を見上げていた。
俺何かやったか?と本気で思うも橘はどこか困ったように眉間にしわを寄せるだけ。
ひょっとしてお前らできてたのかと思うも今はその疑問は無視して用件だけいう。
「この間の飲み会ん時アレキサンドライト見せてくれるって約束したよな?」
言えば大きな目がぱちぱちと瞬きして
「そう言えばしたような?」
春華を見るも「私知らなーい」と視線を反らされてしまった。
「したんだよ」
ごり押しではないがした約束をはっきりと告げれば彼女はカバンからケースを取出して一枚のカードを見せてくれた。
「はい」
「すげー!っていうか、普通に持ち歩いてんのかよ?!」
驚きというか感動というか、テンションマックスで希少なカードのイラストとモンスター効果を読み上げる。
「エメラルドとルビーのスリープで召還で相手フィールドのモンスターカードすべて効果発動できずスリープ。魔法効果は受け付けなく召還されたターンは攻撃できないか…かっけー…」
思わぬお宝を持ってしまった手はふるふると震えてしまうも頭の中ではエメラルドとルビーは持っているからとデッキ構成を始めている。

「もういいよね」
言って佐鳥あすなは俺の手からさっとカードを取り返し、ケースに入れてよりにもよって橘に渡してしまった。
「はい。蓮さんに渡してね」
「ああ」
そんな短いやり取りをしながら橘はケースをカバンの中に入れてしまった。
「あー!!」
思わずというように叫んでしまえば何?というように橘とそろって二人というかすっかり忘れていたが背後にいた友達さえも俺を見ていた。
「何で!超レア!橘…」
あまりなショックな光景に言葉が文章にならず単語になってしまえば
「カードは蓮さんに渡す約束してあるし、蓮さんは凪君のお兄さんだし」
何かまずいことでもあった?と橘と春華の顔を交互に見れば呆然としていた俺の説明をするように康生が苦笑紛れに言う。
「今度大会あるだろ?こいつ優勝目指してるからさっきのカード借りたいんだとさ」
学校ではストイックでフェミニスト。どこかセレブっぽく、だけど詳しいことは不明というミステリアスな男で通している俺を理解してくれていて、あえて『うーたん』の事を省いてくれた康生に感謝してしまう。
ゼミではいつも一人で行動してることが多く成績は不明だが可もなく不可もなくあまり目立たない橘との交流は名前を知ってる程度の交流。
作品名:星屑リング 作家名:椎名 李砂