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椎名 李砂
椎名 李砂
novelistID. 32369
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星屑リング

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いきなりこんな濃い交流で大丈夫かと思うも、そこはWotMユーザーだ。話は通じるはずと信じて俺の趣味の新たなる理解者だと信じて「実は」とか継ぎ足して照れ笑いでごまかす。
だけど橘は困ったように視線を俺に向け
「アレクサンドライトはもちろんこの間発売したカードは今度の大会はまだ使えないぞ」
世界大会選抜も兼ねているから各国での発売のずれを考慮して来月の本戦からは使えるけど今月中の予選会には使えないと、スマホで公式のルール一覧を俺に見せながら説明してくれた。
茫然と使用禁止カードリストを見れば、今回のシリアルナンバー以下の数字は使えなくなっていた。
「まじかよ…」
思わずうなだれた俺に康生がルールはしっかり確認しようなと俺の背中をポンとたたいた。
つまり、今回発売されたカードを混ぜて構成したデッキは使えないという思わぬ事実にもぶち当たり今日はもう家に帰ろう。そして1からデッキ作りだと心の中で涙を流していれば
「じゃあ、改めて行ってくるね」
「はーい。行ってらっしゃい。橘もちゃんとあすなを家まで送り届けるのよ!」
「いつも送り届けてるだろ」
「ボクそんなにも頼りないかな…」
「補導されたら大変でしょって言ってるの」
「はう…」
項垂れた佐鳥は励まされるように橘に頭を撫でられながら二人そろって歩きだした。
地味っ子と、ゼミでの影の薄い橘という何とも言えないカップリングの背中に向かってさよならレアカード…と見送れば
「で、あの二人どこ行くんだよ」
康生の何気ない質問に
「カードショップ巡りだって。なんか必要枚数が足りないとかなんか言ってたけど」
「悪い。俺もルールはよくわからん」
「つか、今ショップ巡りとか言った?」
春華に首を向ければ
「言った」
驚いたというか、呆れたという顔で言い返された。
これはチャンスだ!
「おい、橘と佐鳥待てよ!」
食堂出口で足を止めた二人に俺は駆け足で追いかけて
「ショップ巡りするなら俺もついていっていいか?」
遠くから裕太がおーいと俺を呼ぶも佐鳥は橘を見上げ
「ショップ巡りって言っても2、3件回るだけだぞ?」
「ああ、俺いつも近所しか行かないから別の所行ってみたかったんだ」
欲しいものを確実に手に入れるにはネットの方が無駄がないんだろうが、ショップの雰囲気とかはともかく人ごみな場所はちょっと苦手で通いなれた店以外あまり入ろうとは思えず、家から近いリサイクルショップばかりが本拠地だった。
だけどカードの補充という目的と、知り合いというにはまだ図々しいが全く知らないわけのない相手と一緒ならあの独特の雰囲気にも負けないと自分に言い聞かせて冒険を冒す。
「じゃあカバンとってくるから」
言ってさっきまでいたテーブルに置きっぱなしのカバンを取りに戻り、康生に一緒に買い物言ってくると簡単な説明をして俺はみんなと別れた。
作品名:星屑リング 作家名:椎名 李砂