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椎名 李砂
椎名 李砂
novelistID. 32369
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星屑リング

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休み明けの大学で俺は食堂で項垂れていた。
そんな俺を最初発見した裕太はUMAを見たように驚きおののき、次にやってきた香月も同じ反応した。
一緒に来た康生と雅人は辛うじて何とか踏みとどまるも、俺は逃げようとする康生の胸倉を掴む。
「なんだよ、俺何かしでかしたか?」
突然の出来事に何処か涙目の康生に俺は超真面目に
「今すぐ春華に佐鳥あすなのメアド聞き出せ」
「は?つーか、俺の彼女を名前で呼ぶな」
「春華の苗字なんて知るか」
「昴落ち着けって」
香月に引張られながら適当に座り、カップのアイスコーヒーを口へと運び、俺が落ち着く間に香月、雅人、裕太はとりあえずこのあいだの合コンの子達と付き合う事になったと報告をしあっていた。
「ってか、何であんな地味っ子のメアド欲しいんだ?」
一通り話しを終えた所で雅人が怪訝な顔で聞いてくる。
「胸ねぇし」
二次会後ホテルへ直行したと言う巨乳マニアは十分堪能したと言う。
いきなり直行かよと思うも向こうもその気だったと言われればお前らお似合いだよとあきれたため息をだれともなくこぼした。
「つれて歩くにもアレだし」
実は目立ちたがり屋と言うか自信過剰でナルシストなところがある雅人は隣を歩く子は周囲の注目浴びるような可愛い子が好みで、まったく人の内面を見ないから付き合って三ヶ月持った試しがない。
「俺ロリじゃねぇし」
可愛い子は大好きだ。でも案外ノーマル思考な裕太は桜乃がたぶん二股で本命は別に居る事を見抜いて付き合うと言う悪食だ。
曰く、どうせ長く持って学生の間だけだし、そのうち自然消滅するでしょと割り切っている。
本命さんとぶつかったらどうするんだよと突っ込むも「友達」として処理する気で居るあたり結構サイテーだ。
「お前ら三人とも結構ろくでなしだな」
そうか?と真顔で声をそろえて言う辺り自覚ないと言うところだろうが
「じゃあ昴は何を目的であんなジミーちゃんが良いわけ?!」
康生がよほどの付加価値がなきゃお前が興味もたんだろと付け加えた言葉に俺は零れ落ちる笑い声を隠す事が出来ず
「ふっふっふ・・・よくぞ聞いた」
言えばしまったと言うように視線をそらすも俺はお構いなしに話しを続ける。
「この間の合コンのギャラでカード買ったって言ってただろ?アレで何かいいのでたか聞いたらウルトラシークレットがでたって言うんだよ!
しかも俺が集めてるジュエルドラゴンシリーズの未発表のヤツ!
店頭でも奇跡的に見かけても非売品だったり1ダースの諭吉さん召喚だったり、そのケース越しのお嬢さん(?)持ってるって言うんだよ」
四人とも視線所か顔もそらしてそっと溜息。
「そうだよな。お前が三次元の女の子に興味持つとは思ってなかったな」
雅人の溜息に俺はそんなことは無いと首を振る。
「アイドルには興味ないが『うーたん』だったらグッツ集めてるぜ」
「オタクアイドルだろ・・・」
「『うーたん』はアイドルじゃない。世界一のマジシャンだ!」
「だからマジ顔で言うなって。折角顔いいのにお前イタすぎる」
「確かに『うーたん』は可愛いかもしれないけど、半分二次元だろ」
「お?裕太は認めるのか」
「あの足は良いよな。陽に焼けたことのないような白いあんよにぎゅって抱きしめたら折れちゃうような細い腰。ちょっと童顔だけどわりと胸もあるみたいだし、何より押せ押せで行けば大胆な調きょ・・・」
「それ以上言うなヘンタイ」
ぺチンと頭を叩いて思わぬ妄想に突入しそうになる思考にストップをかける。
「まあ、でも大会のたびに主催者の用意する衣装着るもんな。案外大胆だよなあの衣装は」
視線は食堂に設置してあるテレビへと向ければ下着が見えそうで見えない短い花びらのようなスカートがくるりと翻り二次元的に細い腰に巻かれた紐が密に編みこむようにチューブになったトップスと言う際どいまでの衣装の背中には妖精の羽がついていて、くるんとした長い自前のまつ毛とこぼれ落ちんばかりの大きな瞳、そして食べたくなるような小さく薄い唇は艶やかに光っていて、どんなセットをしたのか不明なまでなヘアスタイルはまさに妖精と言ってもいいほどに相応しい。
週末の大規模なカード大会の宣伝だが短いまでの15秒のCMの少女の隠れファンは口に出さないだけで結構居る事を俺は知っている。
「まあ、確かに可愛いけどもうちょっと胸は欲しいな」
「標準よりはでかいだろ?」
標準よりでかいと言っても正確な年齢は公表してない。理由は登録しているWotMのサイトのプロフが年齢を非公開にしているから。
年齢不詳の中の上のロリっ子、中学生ならこれからの成長が楽しみだけど
「うーたんはヘンタイマニア向けじゃねえっつーの」
「三次元嫌いのおたくの心を鷲掴み。これをマニア向けと言わずなんと言う」
「まあ、昴の場合は半分同情できるけどな」
小学校からの付き合いのある康生には俺の女嫌いの過程を理解してくれている数少ない理解者だ。
羨ましいと誰もが最初は言うが、成長と一緒にその『羨ましい』を見てきた康生はただ同情だけをしてくれていた。

幼稚園の時はまだ普通だと思っていた。
康生と出会った小学校低学年は幼稚園の延長上あんまり違和感も覚えず過していた。
小学校高学年の頃中学受験とか周囲が騒ぎ出す頃『この学校大学までエスカレータ式だから受験する事無いんじゃない?』とひそひそと声を殺しながら囁き合って受験生を眺めていた。
中学になってから外部受験者が大量にやって来て、エスカレータ組の俺達の事を事ある毎に金持ちと言うが、俺だって普通に暮らしているつもりだ。金持ちとか言われる筋合いは無い。
確かに親は企業を経営していて、周囲よりは良い暮らしをしているようにも見えるが、実際俺が稼いでいるわけでもないから親の実績で俺を見るのは嫌悪感を覚えた。
確実に女に嫌気がさしたのは高校の時。
更に外部受験者が混ざり、幼稚園からのエスカレータ組が少数扱いになった頃。
幼稚園からの持ち上がりと言うだけでやたらと女が媚売ってきたり、たまに一緒に出かければ当り前のように支払いを任され適当に店を入ればさすが結城君は違うねと、神経を逆撫でる様な科白を容赦なく浴びせられた。
康生みたいに上手く立ち回ればよかったのだろうが、俺は見事ドツボにはまり、こんなアホ女達と大学まで一緒に居たくは無いと別の学校に受験する事にした。
親はもちろん康生も驚いたけど、なんとなく察してくれた康生は付き合いよく同じ大学まで来てくれた。
おかげで香月、雅人、裕太と言う悪友にも恵まれたのだが。
康生もだが家の事情はあえて口には出さなかったものの、みんななんとなく察しはしてくれているようだ。
尤も、時々康生が大学に乗り付けてくる車を見れば家庭の事情は判ると言うものだ。
本人はBMWなんてジミだろ?と言い切ったが・・・
ちなみに春華とはたまたま入ったマックでバイトしていた彼女を康生が一目惚れ。俺の失敗を見ていた康生はマメにバイト先に通い、知り合いになってメアド交換してと、本当にジミだがコツコツとアタックを続けて付き合う事に成功したと言う微笑ましいまでの努力だった。
作品名:星屑リング 作家名:椎名 李砂