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TAKARA 未来
TAKARA 未来
novelistID. 29325
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二つのあいさつ

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明るいあいさつ



「おはようございます!」

 俺は、最上の明るい声を発しながら、ひんやりとした扉を押し開けた。
 その瞬間、室内に存在していた人間達が、一斉に俺の方向に顔を向けた。ぐったりと疲れた様子の男、眠そうな男、キビキビとした雰囲気の男……ここには、男しか存在していない。
 自分を落ち着かせようと、大きく息を吐き出して、もう一回、元気よくあいさつをした。

「おはようございます。今日から、この会社にお世話になります、宝田と申します。前職の体験を生かし、少しでも早く皆様の足手まといにならないよう、日々がんばりますので、よろしくお願いします!」

 決まった、とひそかに自負し、心の中でにんまりとした。
 声のトーンもあいさつも、自分の元気で若々しさを、充分に発揮できたではないかと思える。前職とは全く異なる業種・職種だが、若さと体力には自信がある、と面接で伝えた通りの第一印象に成功したようだ。……
 しかし、何か違和感がある。
 俺を見つめる、けげんそうな顔、顔、顔、顔。誰もが無言のままである。
 俺は異質な存在なのか?
 待てよ。まさか、転職初日から遅刻でお怒り……。いや、時計を見るとまだ8時10分で、始業開始までには20分あり、文句を言われる要因はない。 
 淡く白い壁に囲まれた室内は、20坪程度の広さのようだ。若干原色が薄れた事務机・椅子が所狭しと並び、出勤している男達は、その半分に満たない。卓上のパソコンも半分は眠っている。
 一体、俺が何かしたとでも言うのだろうか?
 明るく、元気よくあいさつをしたのに、誰も返事をしてくれない。
 側頭部に、重く鈍い頭痛が発生しつつある。前職をやめた原因のストレスと、初日から付き合わなければいけないのか? 

作品名:二つのあいさつ 作家名:TAKARA 未来