女性タクシードライバー
「あのう……これでいいでしょうか」
渡したのは、手書きの領収書。会社のはんこうは捺してあるが、金額は無記入である。
(持ってて良かった!先輩の指導を素直に聞いたれいかはえらい!)
れいかはそれを一枚乗客の男に渡し、
「すみません、いつもの金額を入れてください」
男性の客は、
「あ、そう、あんたも困ってんだから、釣りはいいや」
と、千円札を一枚置いてってくれた。
昼に営業所に戻り、れいかは事務所に残っていた配車係の男に事実を報告して詫びた。
れいかは覚悟していたが、思ったよりもひどく叱られた。罵声の嵐の中、息が止まりそうだった。虐め殺されそうな感じだった。所詮女だ!そう云って罵られた。大人の体して、子供じゃねえか、とも云われた。
(何でそんなこと云うのよ!こんなのセクハラじゃない!)
最初はじっと我慢していたのだが、れいかは段々哀しくなってきた。目元のすぐ近くまで、涙が来ているのを感じる。
(たった千五百円の損害なのに、それだけでこんなに云われなければいけないの、こんなことだから、同じくらいの年齢の女性がいないんだわ)
作品名:女性タクシードライバー 作家名:マナーモード