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女性タクシードライバー

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 必死で涙を堪えていると、階下から明子さんが来た。彼女はれいかの母親くらいの歳の女性ドライバー。朝から晩まで頑張っていて「肝っ玉母ちゃん」と呼ばれている。
「れいかちゃん、どうしたの?」
 そう聞かれて、今まで抑えていたものが一度に溢れ出した。
「明子さぁん!実車ボタンを押すのを忘れちゃって……」
 れいかは明子の背中に突っ伏して思いきり泣いてしまった。なにやら訴えようとしているのだが、ことばにならない。明子が配車係の男に抗議してくれた。
「あんたさあ、この子虐めたってしょうがないじゃんよ。クラコンのボタン、ちょっと押した位じゃ動かなかったよ。あたしも申し送りしたのにねえ。みんなさあ、この子来てからやる気出してんだから、ずっと居て貰わないと困るじゃんよ」
(そうなんだぁ、先輩の方々は、わたしが来たからって、頑張ってるんだ)
「れいかちゃん、あんた、身体は大きいけど、子供だねえ。泣くんじゃないの。そのくらいのこと気にしないで、頑張んなさい」
「はい。もう失敗はしません!」
 れいかは漸く笑顔を取り戻した。
 夜になって帰宅すると、れいかは母に今朝のことを話した。
「あんたは偉そうなこと云っても、やっぱり子供ねえ」
 母はそう云って笑った。


                了