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河上かせいち
河上かせいち
novelistID. 32321
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モントリオールのおじいちゃん

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1.



 11歳の冬休み。
 クリスマス目前で、街中がきらきらのイルミネーションで埋め尽くされていた。
 僕は身を刺すような寒さも忘れて、クリスマスプレゼントは何がもらえるのか、わくわくしながら先生にご挨拶をして学校をあとにした。
 家に帰ると、母さんが言った。
「AJ、今年のクリスマスはモントリオールに行くわよ」
 僕の家族や友達は、僕のことをエイジェイと呼んだ。Alexのスペルの最初の2文字が、AとJに見えるかららしい。
「えぇ?僕らが行くの?カナダまで?」
 僕はがっかりした。
 だって、せっかく家中クリスマスの飾りつけしたし、ツリーだって、大きなの用意したのに。
「仕方ないじゃない。おじいちゃんは車椅子で動けないんだから」
 ふてくされてプレイルームにこもって、SonyのPlay Station 3を立ち上げた。後ろから母さんの声が追いかけてきた。
「それにね、AJ。今年おじいちゃんとおばあちゃんの家には素敵なゲストがいるのよ」
「素敵なゲスト?」
 僕はゲームをスタート画面のままにして、後ろを振り返った。
「日本人の女の子がいるの」
「日本人?」
 僕はSonyのゲーム画面をちらりと見た。
「そうよ。モントリオールの高校に留学しててね、クリスマスの間だけおじいちゃんとおばあちゃんの家にホームステイしてるんですって」
「・・・ふうん」
 僕は別にどうだってよかった。
 日本人だなんて言ったって、そこら辺にいるし。
 現に、学校にだって日系の子くらいたくさんいる。
 別に珍しくもないし、興味もない。
 そんなことより、わざわざモントリオールまで行くの、面倒くさいなあ。
 飛行機ちょっと苦手なんだよなあ。
 僕フランス語の成績悪いし、街の人何言ってるかわからないんだよなあ。
 僕はゲームをロードして、スタートさせた。