Minimum Bout Act.02
少年がシンを探して欲しいと訴えた直後、建物の向こう側で爆発音が響き、閃光が走った。そしてたくさんの人の悲鳴と銃声。市街地で撮影されたらしいその映像は、それを最後に途切れてしまった。
ルーズは急いでカッツの部屋へと階段を昇る。
ドンドンドン!!
「カッツ、起きて! シンが1人でリドヒムへ向かったの! カッツ!!」
ドンドンドン、ガンガン!!
拳では追いつかないと思ったらしいルーズはドアを激しく蹴る。
ガンガンガン!
ガチャリーー
「……うるせーな。俺は低血圧なんだ。もちっと静かに起こしてくれ」
のそりとドアを開けたカッツに、ルーズが声を荒げる。
「ただの二日酔いのクセに何言ってるの、すぐにシンを追いかけるわよ!」
「ああ? シンがどうしたって?」
「だから、1人でリドヒムに行ったって言ってるでしょ!?」
「子どもじゃねーんだ、ほっとけ……あと5分したら起きるわ。朝食はフレンチトーストでお願いしーーーうわあっ!?」
再び部屋の中へ戻ろうとしたカッツの襟首を掴み、ルーズは強引に廊下へと引きずり出した。
「寝ぼけてるんじゃないわよ、いいから行く! 眠いなら船の中で寝てなさい!」
「いたたたっ! ル、ルーズさん? 暴力反対っ」
カッツとシンが知り合ったのは今から7年程前の事。
宇宙ではエンドを基点とした新たな惑星を手に入れるべく、意味の無い戦争が繰り返されていた。
地球を滅ぼしたその兵器と欲望をそのまま宇宙へ持ち込み、毎日のように人や宇宙船の残骸を宇宙へまき散らす日々に人々もいい加減嫌気がさしていた頃、たまたまカッツが所属するエンド軍部隊が、リドヒム軍からの要請を受けて派遣された時に知り合った。
ただでさえ宇宙のあちこちで戦争が激化していた当時、内乱で政治的にも不安定状態が続いていたリドヒム惑星政府が、内乱の首謀者を含む反政府軍を一掃する為にエンドに応援を要請したのだ。
シンはリドヒム軍特殊部隊の斥候として、指揮を取るカッツを隊長としたエンド軍と組んで前線に借り出されていた。
その時の事は今でも鮮明に覚えている。
「とにかくすげー男前でさ、それだけでムカつくのに銃の腕も半端無いときやがった。百発百中ってやつだな。俺が殺せと命じたヤツは、どんな不利な状況でも必ず殺してくれた。ヘイズってのはシンの通り名だよ」
作品名:Minimum Bout Act.02 作家名:迫タイラ