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Minimum Bout Act.02

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「すまない。政府側もすぐには動かないようだし、こちらの準備が出来次第すぐに連絡をする」
「分かった。こっちも準備を進めておこう。それじゃあ帰るぞシン。 ……っと、忘れる所だった。チェイスの息子の事はすまないがあんたらに頼みたい」
 バンと勢い良くシンの背中を大きな手で叩くと、カッツはトーヤ達に軽く頭を下げ、力の抜けてしまったシンを半ば強引に連れて外に出た。
 それを見送りながらトーヤとパメラ、他の連中はゆっくりと頷いた。

 建物を出て振り返ると、カッツがどんよりとした色の空中に向かって言った。
「自由には2種類ある。自分の好きなことを自由に行なう偽りの自由と、自分のなすべき事柄を自由に行なう真の自由……。シン、お前の言う事は正しいよ」
「ーーーそれはお前の名言か?」
「まだ地球に人間が住んでた頃の、19世紀のイギリスのなんとか言う小説家の言葉だよ」
「はは、カッツの口から小説家の名言が聞けるとはな……」
 微かに顔が綻んだシンに、カッツはさらに言う。  
「人間にとっての自由とは、本能のまま好き勝手行なう事じゃない。この小説家は当たり前の事を大昔から言ってんだ……でも、自分のなすべき事柄を自由に行なえている人間がどれほどいる? そもそもなすべき事柄なんて、誰かに示してもらわなければ分かるはずもないだろうが。お前も俺も、戦争が人間のなすべき事だとは思えなかったから武器を捨てた。そしてあいつらの生き方が正しいとも思わない。だけどな、選ぶのはあいつらだ。強制は出来ない……だったらさ、俺達に出来る事は手伝おうぜ。それでいいだろ?」
「……ああ、分かってるさ」
 チェイスJr.は穏やかな表情で、静かに息を引き取った。
 チェイスからの伝言は、シンの心を救った。
 それは、シンが選んだ道が間違いではなかったのだと、この弱い背中を押してくれた。
 仲間の死の知らせなど聞きたくはない。出来る事なら、もう二度と。
 シンの心の中が晴れやかになる日はまだ当分来ないかもしれない。自分の過ちと共に生きて行く事を選んだのだから。
 それでもこうして毎日は過ぎて行く。誰かの苦しみと、幸せを同時に受け止めながら。
 リドヒムがこれからどういう道を辿るのかは分からないが、シンは見守り続けようと思う。そして自分に出来ることがあるならば、カッツが言うように手伝いたいと、心から思った。
作品名:Minimum Bout Act.02 作家名:迫タイラ