Minimum Bout Act.02
「ーーーもうよせ、シン」
「いや、よさない。オレは誰にも死んで欲しく無いんだ! 戦争をして何になる? 歴史に名を残して満足するのか? それで本当に何かが圧倒的に変わるとでも思っているのか!? 根本的な解決になどならないことは、お前達だって分かっているだろう!」
怒りが収まらないシンは、とうとう立ち上がって歯を食いしばる。肩を震わせ、拳を握りしめ、悔しそうに呟いた。
「オレは、人殺しだ……お前達の仲間を数えきれない程殺して来た。どんなに偉そうな事を言ってもこの過去は消えない。だがな……人間は生きる事を諦めない限り、必ず幸せを掴めるんだ。男だろうと女だろうと、老人だろうと子どもだろうと、必ずーーー生きる事には意味があるんだ……なければいけないんだ。それは政府の人間だろうが、反政府の人間だろうが、皆同じなんだ……」
「シン……」
カッツはシンのその姿に胸を打たれた。それはトーヤ達も同じようで、皆一様にシンの訴えを静かに聴いている。
しばらくして、パメラが口を開いた。
「あたしは医者だ。医者の立場から言わせてもらえば、もう、誰かが戦争で傷つくのを手当てなんかしたく無い……だけど、トーヤの気持ちも分かるんだ。あたしは内乱が始まった時からずっと反政府側にいて、30年以上医者をやってきたんだからね」
「お、俺は嫌だっ! あんたらみたいに仲間を捨てて逃げ出して、楽な道を選ぶなんてしたくねえ! 例え最後の一人になろうとも、政府軍の奴らを1人でも多く殺してから死んでやる!」
「ウェイ、待ちなっ!」
ガタンと立ち上がり、止めようとするパメラを振り切りウェイはシンに向かってそう言い捨てると、走り去ってしまった。
トーヤはふとシンを見て、頭を下げた。
「ありがとう……敵であったあんたにそう言ってもらえるなんて、夢にも思わなかったよ。なんだろうな。あんたには仲間がたくさん殺されてるのに、腹が立たないーーーもう感覚が麻痺してしまっているのかもしれないな……誰かが死ぬ事が、ここではこの何十年もの間、当たり前すぎた……俺は残るが、もしリドヒムを出たいという仲間がいたら、図々しいお願いだが手を貸してやってくれないだろうか?」
「だがっ……」
「ああ、いいぜ」
すぐにシンを止めてカッツが胸を反らす。
「俺様に任せときな」
作品名:Minimum Bout Act.02 作家名:迫タイラ