Minimum Bout Act.02
「あんたの言う事は分かる。だがな、例え組織が俺達を見捨てたとしても、俺達は国を捨てて出て行く訳には行かない」
そう目の前で言う若い男は、反政府軍の幹部の1人であるトーヤという男だった。24、5歳とまだ若いが、落ち着いていて随分と頭も切れるというのがその風体から伝わって来る。ぱっと見は科学者のような細い線をしているが、どこかしら人を束ねる為に必要な威圧感を備えていた。
カッツとシンがチェイスJr.の寝ている病室に入ってしばらくすると、このトーヤを連れてウェイが戻って来た。
結局チェイスJr.はトーヤの顔を見て、シンとカッツに父親からの礼を伝えた後、静かに息を引き取った。
それからシン達は別室へ移動し、トーヤに組織が政府側に完全に付いてしまった事を告げ、反政府軍を惑星エンドへ移住させる事を提案したのだが、断られてしまった所だった。
「何故? 投降しなければ死ぬだけと分かっているのに、何故戦い続ける? そこまでしてこの星を守って何になる?」
納得のいかないシンは、トーヤに尋ねる。トーヤはウェイ、パメラ、そして他にも集まって来た数名の仲間の顔をゆっくりと見回し、笑った。
「幹部数名が組織の意向を探る為に星を出たが、誰も帰って来なかった。その時から覚悟はしていたよ。チェイスJr.の話しと政府軍の密約破棄の行動、内乱が続いて来た期間を考えればそろそろ潮時だ。だが、もしここで俺が星を捨てて出て行ったら、この30数年の間にリドヒムの為に死んで行った仲間達に申し訳が立たないんだよ……分かるだろ? 皆幸せに暮らしたい。ただその一心で戦って来た。今更敵に背中を見せる訳には行かないんだ。死んで行った仲間の為に、苦しい思いをした俺達と同じ思いをあいつらに少しでも味わわせてやりたいーーー」
「武器を取り、死を恐れずに敵を倒す事は勇気じゃない! 敵って何だ? オレは元政府軍の人間だった。だが、人を殺す事に疑問を感じていた……いくら強くても、そんなものは何の役にも立たない。皆それぞれ息をし、時には涙を流し、疲れ喜び、生きているんだ! 生きる事を考えて何が悪い? お前達は仲間を無駄死にさせる事が革命だとでも言うのか? 自爆でもして、華々しく死ねば何か残るとでも思っているのか!?」
ドン!
とテーブルを叩き、シンが声を荒げる。
その言葉に誰もが顔を伏せる。
作品名:Minimum Bout Act.02 作家名:迫タイラ