Minimum Bout Act.02
No.7「選ぶ道」
目を覚ましたチェイスJr.は、シンの顔を見ると涙をこぼした。
「シン……父さんの、相棒……」
「あんまりしゃべるんじゃないよ」
急いでチェイスJr.の隣りへ寄ると、パメラが脈を取りながら様子を伺った。その切れ切れの呼吸から、もう長くはもたないと悟る。
シンはゆっくりとチェイスJr.の脇へ立ち、ぐっと目をつぶって頭を下げる。
「ーーーすまない。オレは、お前の父親を裏切った……」
「ち、違う……父さんは、自分の意志でここに、残った……シンの所為じゃないーーー」
カッツと同じ事をチェイスの息子の口から聞いたことで、シンはほんの少し、気持ちが軽くなった。
共に国を出ようと言った時、チェイスは一瞬悲しそうな表情をした。
それが何を意味していたのか、今、やっと分かったような気がする。
「あたしが代わりに伝えるから、眠りな」
苦しそうなチェイスJr.にそっと手を置くと、パメラがこちらを向いて口を開いた。
パメラによると、半年前に政府軍が打ち出した作戦は、反政府軍との戦争を一次休戦するための大事なものだったという。チェイス率いる先発隊が、反政府軍の前線まで到達した所で一斉攻撃をするように見せかけ、反政府軍の幹部達が政府軍に投降するというシナリオだった。
危険はなく、反政府軍側も承知していたはずが、チェイス達が前線に到着した途端、政府軍は見せかけではなく、チェイスもろとも実際に攻撃をしかけてきたのだ……
頭上を飛び交う砲弾の嵐と、約束と違うと叫びパニックになる反政府軍のるつぼの中、チェイスはJr.と生き残った仲間を反政府側へ逃がす為、自分の身を危険に晒した。たまたま近くにいた反政府軍の幹部の1人がその様子を見ていて、事情を飲み込むとすぐにチェイスJr.達を安全な場所へと誘導したのだが、チェイスとほとんどの仲間は銃弾に遭い命を落とした。
チェイスはずっと戦争が早く終わり、敵味方などなく平和に暮らせる星になって欲しいと言っていた。チェイスJr.は父のその意志を継ぎ、仲間を平気で裏切る政府軍ではなく、反政府軍に加わり戦争を終わらせようと決意した。
作品名:Minimum Bout Act.02 作家名:迫タイラ