Minimum Bout Act.02
「あたしたちだってもう戦争なんかしたくないんだよ。戦争があまりにも長く続きすぎた……だから、適当な所で政府軍と休戦する方向へ動いてたんだ。だけど、半年程前だった。政府軍から次に起こす作戦で、一次休戦をしようという密書が届いたんだ。こちらは同意し、打ち合わせ通りに作戦は進行してたのに、急に向こうが打ち合わせと違う攻撃を仕掛けて来たんだ。結局こっち側の大将は約束と違うと怒って派手にドンパチさ……その時にこの子は政府軍にいたそうなんだけど、自分のいるすぐ後方にいた部隊が急に攻撃を始めて、それに巻き込まれて父親は死んだらしい」
「なんだと?」
シンはジャイロに聞かされた内容と違う事に寒気がした。それではまるでチェイスを殺し、反政府軍を煽る為にわざと出撃したみたいだ。
「う……パメ、ラーーー」
「あっ! Jr.目が覚めたのかい? あんたに会いに、人探し屋さんが来てくれたよ!」
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ルーズはジャイロに通された部屋を抜け出し、レンタカーまで戻って来ていた。
そしてノート型端末を使い、リドヒム政府軍のコンピューターにアクセスし、ここ数年作成された機密事項を調べていた。
ジャイロの言葉と、チェイスJr.から送られて来た映像に違和感を感じたのだ。
「半年前の記録はどこ?」
何十にも張られたセキュリティーの隙間を縫いながら、ルーズは思わぬ事実を発見して息を飲む。
「……ちょっと、これってまさか」
見つけたのは反政府軍とリドヒム軍との密書の原本で、内容は次の作戦でリドヒム軍が総攻撃を仕掛けたら反政府軍は応戦するフリをして前線に出て来る事。そして空の砲弾を連射した後、反政府軍のリーダー及び組織構成員数名で投降するというシナリオだった。
さらに、リドヒム軍内部で通達された重要連絡事項の中に、その作戦の指揮をとるチェイスとその部下。そして息子のチェイスJr.には内密にして、チェイス達が前線に出たら実弾を発射して後方から狙撃するという作戦があった。ジャイロ達リドヒム政府側は最初からチェイスを殺すつもりだったのだ。
一体何故?
最近ルーズ達の所に舞い込む仕事はplain絡みだったり、分からないことだらけだ。
分からない。
なんと都合のいい言葉だろう。
ブルリと一度頭を左右に振り、ルーズはパソコンのキーボードを叩いた。
作品名:Minimum Bout Act.02 作家名:迫タイラ